阪神・マルテ「引っ張ってスライス」の技

[ 2019年7月6日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神3―1広島 ( 2019年7月5日    甲子園 )

<神・広> 左翼線への飛球が切れそうで切れないマルテの打撃(撮影・大森 寛明)
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 5回、阪神・マルテが放った左翼線上への飛球は、切れそうで切れなかった。真っすぐに飛び、ポール際ギリギリに着弾した。

 マルテの左翼線への打球は切れない――。前例がある。5月29日の巨人戦、8回に放った5号2ランだ。普通なら切れそうな「引っ張った打球」がスライスしてフェアゾーンへ戻り、ポール際に着弾。当日、スポニチ本紙評論家の関本賢太郎氏も「相当、高い技術」と目を丸くした。プロの技術をもってしても、バットのヘッドを返すことなく打球を引っ張り、それを遠くへ飛ばすのは至難の業であるという。当たりの違いこそあれど、この日のアーチも、あの一打をほうふつさせる軌道だった。

 その打撃については、こちらもスポニチ本紙評論家である亀山つとむ氏からも興味深い話を聞くことができた。「引っ張ってスライス回転を掛けるというのは本当に難しい技術。意識してできていた人というのは、俺の知っているかぎりでは落合さんくらいじゃないかな」。落合さんとは…3度の三冠王を獲得した落合博満氏だ。亀山氏は続けた。

 「落合さんは意図して内角の球にスライス回転を掛けていた。そして外の球にはフックのような回転を掛ける。あれは誰にも真似できない技術だと思った。外国人ではマートンもできていた記憶があるね。来日1年目の春季キャンプのフリー打撃で彼の打球がファウルゾーンから戻ってきて、左翼スタンドに入ったのを覚えているから」。首位打者1度、シーズン最多安打3度のマートンもまた、「引っ張ってスライス」の技を持った一人だったそうだ。落合氏にマートン…。「職人」である2人の名が、その技の至難ぶりを物語る。

 そして、マルテだ。思い起こせば、春季キャンプ中のインタビューでも「バットをボールの内側に出していく作業が大事と思っているので、意識している」と話していた。その意識も「引っ張ってスライス」に結びつく。スイング後に左手のフォロースルーが特別に大きいのも、内角球を左手首を返すことなく、打つからだろう。パワーだけでなく、卓越した技術も併せ持つ男なのだ。

 先日、阪神がメジャー通算75発のヤンガービス・ソラーテ内野手(32=マーリンズ傘下)の獲得調査を進めていることが明らかになった。ただ、だからと言ってマルテが“お役御免”でもないはず。理想はマルテとソラーテが並び立つ打線に違いない。実現する日が、今から楽しみだ。(前トラ番キャップ・惟任貴信)

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2019年7月6日のニュース