【内田雅也の追球】満塁の綾、悔しさの薪 

[ 2026年4月23日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―7DeNA ( 2026年4月22日    横浜 )

<D・神(5)>8回、代打・前川は遊飛に倒れガックリ(撮影・須田 麻祐子)  
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 敗戦後の阪神監督・藤川球児が話したように「ギリギリの勝負」だったのは確かだ。

 特に勝負の綾があったのは満塁である。攻守ともに幾度か訪れた満塁機で明暗が交錯した。

 野球を愛した俳人・正岡子規が満塁を詠んだ歌にある。

 今やかの三つのベースに人満ちてそヾろに胸の打ち騒ぐかな

 「そぞろに」は「むやみに」「やたらに」といった意味で落ち着かない様子をあらわしている。乱戦ぎみの試合は「胸の打ち騒ぐ」興奮が相次ぐ展開だった。

 1回裏の失点は2死満塁から先発・茨木秀俊が2点打を浴びてビッグイニングにしてしまった。

 それでも3回表には大山悠輔が右翼席に逆転満塁弾を打ち込んで逆転した。無死満塁から森下翔太、佐藤輝明が続けて凡退した後だった。森下、佐藤輝の凡退を救う、5番に座る意味を示すかのような本塁打だった。

 さらに投手はこの後、2死満塁のピンチを見事にしのいでみせた。5回裏2死満塁で起用された石黒佑弥は代打ダヤン・ビシエドを空振り三振に仕留め失点を許さなかった。7回裏2死満塁は桐敷拓馬は三森大貴を内角シュート(ツーシーム)で詰まらせ二ゴロに切った。直前に同じ左打者の京田陽太にシュートで死球を与えているなか、勇気ある投球だった。

 いずれも適時打を浴びていれば、流れは相手にいっていた。何しろ阪神6安打、相手15安打。押されっぱなしのようだが接戦に持ち込んだ粘りはたたえたい。

 一方で6―6同点の8回表2死満塁では代打・前川右京の遊撃頭上へのライナー性飛球が京田の美技にあった。前川は前夜も9―10の8回表1死満塁での快打で美技にあって併殺打となっていた。不運だった。

 最後は6試合連続無失点と好調だったラファエル・ドリスが決勝点を失い敗戦投手となった。救援勝負となった終盤に競り負けての連敗である。昨年交流戦期間中に6連敗を喫した当時と似ていると言える。ならば、いつかトンネルは抜け、再び強固な救援陣が再構築されると期待したい。

 「この悔しさを力にかえていく」と藤川は言った。松下幸之助の名言にある。「人には燃えることが重要だ。燃えるためには薪がいる。薪は悩みである。悩みが人を成長させる」。悔しさを薪にして燃え、成長していくのである。 =敬称略=
 (編集委員)

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