阪神からロッテへトレード移籍の石崎、祖母と守護神と釣りの話

[ 2019年7月6日 08:45 ]

ロッテへのトレード移籍が決まり、甲子園にあいさつへ向かう阪神・石崎
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 別れの寂しさと同時に去来したのは「釣りトーク」ができない喪失感だった。ロッテへトレード移籍が決まった石崎。昨年から始めた海釣りは共通の趣味で「あそこのポイントは光がよく当たっていて魚が集まっていましたよ」「昨日は坊主(0匹)で…」など、釣果情報を交換し合ってよく盛り上がった。

 14年ドラフトで阪神に2位指名されて入団以来、生い立ちから現在まで、取材する機会は多かった。4歳の時に両親が離婚し、働きに出ていた父・静夫さんに替わって身の回りの世話をしてくれた祖母・房子さんのことが大好きだった“おばあちゃん子”。だから、プロ入りが決まった際、その3年前に亡くなった房子さんの墓前に真っ先に報告へ行って、こう告げた。

 「おばあちゃん、野球で恩返しするね」

 そんな決意とは裏腹に、高校、社会人時代から腰痛に苦しむなど故障が絶えず、プロでも飛躍の足かせとなった。17年の26試合登板がキャリア最多で昨年も開幕からリリーフで奮闘したが、6月に右肘の手術を受けてシーズンを終えていた。

 ケガが惜しまれたのはその右腕に詰まったポテンシャルに誰もが魅せられたからだ。サイド気味のフォームから常時150キロ超えを計測する直球を一目見た多くの虎党は待望される「和製守護神」の夢を見た。“石直球”にはロマンがあった。

 2つの目標があった。一つは、小学3年生の時、房子さんに宣言していた。「プロに入って3階建ての家を建てるからね!」。一昨年、父親のために自費で故郷・茨城に2階建ての家をプレゼント。3階建てではなかったが「親父が“広くて困る”と言ってて」と嬉しそうに教えてくれた。もう1つはアマチュア時代から憧れ続ける先輩・藤川のような絶対的クローザー。甲子園は幻でも「幕張の守護神」への道は続く。

 トレードから一夜明けた5日、鳴尾浜で最後に少しだけ話した。「お世話になりました」と笑った後、感謝と健闘を祈る思いを込めてがっちり握手すると「釣り行けなくなりますね…」とやっぱり、いつもと同じ話題に悲しさは紛れた。

 幸い、千葉の海は大好きなシーバスの魚影も濃いそうだ。4日夜に開催された2軍投手陣による送別会では釣り仲間でもあった藤浪から入手困難なルアーの詰め合わせを“送別品”として手渡され「晋太郎がいっぱいルアーくれて…RJ(爆釣間違いなしのコアマン社の新製品)とか今、手に入らないのに…。めっちゃくちゃ嬉しい」と目を輝かせた。

 「ランカー(80センチ以上の大物)釣ったら、すぐLINEしますからね!」。そう言って、愛車に乗り込んだ。新天地・ロッテでの躍動、そして「大漁」も密かに願っている。(記者コラム・遠藤 礼)

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2019年7月6日のニュース