日本ハム・栗山監督がチームを離脱する吉田輝に説いた「エース」の心得

[ 2019年7月6日 09:30 ]

<日・広>ウイニングボールを手に栗山監督と写真に収まる吉田輝(撮影・高橋茂夫)
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 【君島圭介のスポーツと人間】2014年の春、楽天監督だった故星野仙一氏に怒鳴られた。「則本にエースの自覚は芽生えていますか?」。何気ない一言で、星野氏の顔色が変った。

 「誰が、エースだ。1年しか投げていないルーキーだぞ!」

 前年の13年に無傷の24連勝を達成し、チームを初の日本一に導いた田中将大がヤンキースに移籍。1年目に15勝を挙げた則本こそ、その穴を埋める1番手と考えたが、浅はかだった。「エース」という言葉は、それほど重いのだ。

 6月12日の広島戦(札幌ドーム)でプロ初先発初勝利の偉業を成し遂げた日本ハムの吉田輝が、腰に張りを訴えて2軍落ちした。栗山監督はこう語りかけたという。

 「2、3年後、チームのエースになって、そのとき抜けたら(チームは)痛いんだ」

 高卒1年目の1勝1敗投手に対して使った「エース」という意外な言葉。栗山監督が軽々しく発したとは思えない。吉田輝の未来に向けて与えた大切な指針なのだと考えた。

 エースになったとき、もうこんなことは許されない。だから今は時間をあげるから、2、3年後にチームを離脱しない投手になっているための努力を怠るなよ、という栗山流の激励だろう。

 野村克也氏は楽天時代の田中に「エースとはただ勝ち星だけでいいというものではない。チームの鑑(かがみ)になること」と説いた。黒田博樹氏は「負けても自分1人で試合にけりをつける。ブルペンを休ませて完投する」とエースの覚悟を示した。

 リハビリ中の吉田輝のキャッチボールを観察すると、ソフトボール投手のような下手投げから始めている。最初は遊んでいるのか、と思った。次に斜め下から。横から。斜め上から、と腕が上がっていき、最後はあの背中全体を使った豪快なオーバースローで放り始めた。

 「体を大きく使いたいので、小さな部分を意識しながら投げ始めるんです」

 キャッチボールひとつ、こんなに頭を使って練習するルーキーはなかなかいない。栗山監督が「エース」という重い言葉をあえて使う理由が、分かる気がした。(専門委員)

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