メジャー留学中の日本ハム・矢野コーチ、刺激受けた日米の違い 異例の“修業”に密着

[ 2019年3月5日 08:45 ]

レンジャーズにコーチ留学中の矢野特命コーチ
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 昨季限りで現役を引退した日本ハムの矢野謙次チーム統轄本部特命コーチ(38)が、2月から業務提携先のレンジャーズにコーチ留学している。レ軍のドン・ワカマツ・ベンチコーチ(56)から熱心な人柄を買われ、米アリゾナ州サプライズで異例のメジャーキャンプに参加中。メジャーの練習法や育成法を学び、自身初の米国生活に奮闘する姿に迫った。(柳原 直之)

 2月下旬のレンジャーズのクラブハウス。矢野コーチが24歳の外野手カルフーンに日本語で話しかけた。「ベンチから日本語でおまえを応援していいか?米国だからって英語に変えたくないんだよ」――。通訳を務める元日本ハム投手の榎下陽大氏がその言葉を伝えると、カルフーンは「もちろんだ。何でも言ってくれ」と笑みを浮かべた。

 日本ハムの春季キャンプからアリゾナに滞在し、2月12日にレ軍キャンプに合流してから約3週間。持ち前の明るさでチームに溶け込んでいる。コーチ留学は通常マイナーを巡回するが、矢野コーチはメジャーキャンプに招待された。

 元マリナーズ監督で日系4世のドン・ワカマツ・ベンチコーチが同9、10日に日本ハムキャンプを訪問。その際、矢野コーチの人間性が買われた。「ずっとベタ付きで話を聞いていた。メジャーのベンチコーチと話すチャンスなんかない。単純に興味があって、勉強したいと思った」。現在は現役時代と同じ37番のユニホームを着用し、クラブハウスではワカマツ・コーチの隣席。オープン戦ではベンチ入りもしている。

 キャンプ中は午前5時に球場入りし、トレーニングルームへ。そこでコーチ同士の野球談議が始まる。「みんな野球が大好き。この練習がどうだとかずっと話している」。その後も練習までに複数ミーティングを重ね、同9時30分頃練習がスタートする。

 ケージ内での打撃練習や「ライブBP」(シート打撃)をスマートフォンで撮影し、指導こそしなくても積極的に選手に話しかける姿が目立つ。試合がない日は午後からマイナーの練習を視察し、午後4時すぎまでグラウンドに滞在。そのままメイン球場で開催された大学野球を観戦したこともあったという。

 巨人、日本ハムでプレーした現役16年間は主に代打の切り札として活躍。闘志あふれるプレーがファンから愛されたが、日米の練習法や育成法は新たな発見ばかりだという。

 「悪いプレーをして怒ることもないけど、ナイスプレーの声もない。良い悪いではなくて、選手たちが素でいられる。一番大事なのは素の部分を指導者が分かること」。練習の意図を首脳陣で共有してから選手に伝えることが当たり前で、日本では珍しい光景だ。

 人情を大切にする矢野コーチらしいエピソードがある。ワカマツ・コーチの誕生日だった2月22日のスタッフミーティング。ワカマツ・コーチが好きだという坂本九の名曲「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」をサプライズで披露した。最後は英語で歌い、笑いと喝采に包まれた。

 第二の野球人生。「貴重な機会を与えてくれているレンジャーズ、日本ハムの皆さんには感謝しかない」。アリゾナの抜けるような青空の下、充実した日々を過ごしている。

 ◆矢野 謙次(やの・けんじ) 1980年(昭55)9月21日生まれ、東京都出身の38歳。国学院久我山から国学院大を経て、02年ドラフト6巡目で巨人に入団。07年5月31日のソフトバンク戦で巨人史上5人目となる代打逆転満塁アーチ。15年6月にトレードで日本ハムに移籍。18年限りで現役引退し、チーム統轄本部特命コーチに就任。1メートル78、85キロ。右投げ右打ち。

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