矢野謙次氏 ファンと熱〜い野球談議 米国へコーチ留学「スケールの大きな選手を育てたい」

[ 2018年11月11日 09:00 ]

ファンとともに記念写真に収まる矢野謙次氏(中央)
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 10月下旬、東京都内。巨人、日本ハムでプレーし、今季限りで現役を引退した矢野謙次氏(38)が個人でファン感謝イベントを開催した。

 「巨人時代から応援して下さるファンの方々に感謝の思いを伝えたい」

 義理と人情を大事にする矢野氏らしい発案の下、熱心なファン11人とその家族が集まった。イベントでは食事をともにし、過去の新聞のスクラップ記事を見ながら昔話に花を咲かせた。もちろんサインや記念撮影にも気軽に応じ、感謝の思いを一人一人、丁寧に伝えた。

 そのイベント中のことだ。あるファンが「一番、印象に残っている打撃は何ですか?」と質問すると、矢野氏は間髪入れずに「日本シリーズで武田勝さんから打ったヒットですね」と答えた。

 12年11月3日。巨人が3勝2敗で日本一に王手を懸けた日本ハムとの日本シリーズ第6戦(東京ドーム)。当時、巨人の矢野は「6番・左翼」でスタメン出場。初回2死満塁で、武田勝から左翼フェンス直撃の先制適時二塁打を放ち、日本一を大きくたぐり寄せた。

 実は第2戦でも武田勝と対戦。チームは勝ったが6回1失点10奪三振と完璧に抑えられ、矢野氏もスタメンで2打数0安打と沈黙し、途中交代した。「次は絶対、打ってやると思った」。矢野氏はすぐさま国学院大時代の恩師・竹田利秋氏(現総監督)に電話し、その中で「一塁ベースに向かって打て」と助言を受けたという。内外角の変化球の揺さぶりを武器とする武田勝を攻略するには、むしろその変化球を叩くべき。130キロ台がほとんどの直球に差し込まれても力で押し返す意識だった。

 結果は思い切り引っ張った左翼フェンス直撃の一打だったが「練習でやってきたことがそのまま出せた」。逆方向への意識があったからこそ、最後まで体を開かずボールに食らいつくことができた会心の一打だった。

 熱い野球談議は尽きない。最後の挨拶で矢野氏はこう締めた。「現役を終えてしまいましたが、必ず野球には関わると思います。みなさんが驚くようなスケールの大きな選手を育てていきます」。来年は日本ハムに籍を置いたまま、業務提携先であるレンジャーズにコーチ留学する。人一倍ファンを愛し、野球を愛したバットマン。矢野氏が育てるそんな選手をいつかグラウンドで見れる日を楽しみに待ちたい。(記者コラム・柳原 直之)

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2018年11月11日のニュース