意外!?プロ野球選手になった元球児の甲子園の土の行方

[ 2016年7月28日 08:30 ]

甲子園の土を拾う小豆島ナイン(2016年3月撮影)

 甲子園の土を泣きながら集める球児の姿が、高校野球を象徴していると思う。毎年、全国制覇をした1校以外は負ける悔しさを味わって夏を終える。プロになった元球児は今、「土」をどうしているのか、ロッテの選手に聞いてみた。

 意外にも、保管していない選手が多かった。「試合の映像が思い出として残るから」、「欲しいと思わないから持ち帰らなかった」など理由はさまざまだ。報徳学園で02年春に優勝し、同年夏も連続出場した大谷も土を持ち帰らなかったという。「プロは実力の世界。(甲子園は)過去の栄光なので」と、こだわらない理由を明かした。上を目指す選手にとって、聖地はまだまだ通過点だ。

 印象的だったのは、ベンチ外の部員にあげたという答えが多いこと。日大三のエースとして09年夏に出場した関谷は「ベンチに入っていない同級生に分けた。練習からずっとサポートしてくれたので感謝している」という。手元には残っていない。最後の試合は東北との2回戦。2―2の8回の打席でスクイズを失敗し、9回の投球で失点して敗れた。「後悔はないけど、自分のミスで負けた悔しさはある」と関谷。土は残っていなくても、思い出は残っている。

 控え部員に土を贈るという話を聞き、もう一つ高校野球を象徴する場面を思い出した。勝ったチームが校歌を歌ってグラウンドに一礼した後、スタンドへ走りだす瞬間だ。一番うれしそうに見える。応援席の仲間と勝利を分かち合う時に喜びが爆発するのだろう。

 ある高校の監督が円陣で選手に言っていた。「マウンドで140キロを投げるやつも、スタンドで声をからして応援するやつも、人間の価値は変わらない。チームのために全力を出しきっているという意味で同じ価値がある。そこに優劣をつける理由はない」。ベンチ外の選手のために戦うチームは強い。そういう視点で今夏の甲子園を見ていきたい。 (渡辺 剛太)

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2016年7月28日のニュース