【内田雅也の追球】阪神 ちょうど70年前“新聞紙着火事件”で打線に火

[ 2016年7月28日 08:55 ]

<神・ヤ>2回1死満塁、中村の一ゴロで、本塁に送球し併殺とするゴメス

セ・リーグ 阪神―ヤクルト

(7月27日 甲子園)
 阪神のチーム連続安打はプロ野球初年度1936年の「10打数」、戦後再開46年の「9打者」がある。この夜、4回裏の10打数連続安打は80年ぶりタイ記録となる。

 46年の方は、猛打タイガースの代名詞「ダイナマイト打線」の異名がつけられた年でもあった。7月16日時点で打撃10傑に実に7人が名を連ね、野球記者が名付けた。

 異名が紙上に出た後、西宮球場での巨人戦では4―4の6回裏に一塁ベンチで藤村富美男が新聞紙にマッチで火をつけ、たいまつのようにかざして怒鳴った。「ダイナマイトに火がついた!」

 そして確かに打線に火はついた。金田正泰、土井垣武で築いた2死一、二塁、藤村が2点三塁打して勝ち越し。8回にも長谷川善三の本塁打、藤村の適時打で2点を入れ、試合を決定づけた。

 この伝説的な新聞紙着火事件があったのが、ちょうど70年前のこの日、7月27日だった。

 投手で先発していた呉昌征が球団史などに語っている。「本当に火をつけて打線に火をつけた。誰かが“そろそろいこか”と声をかけると集中打が出た」。

 ただ、後に「ミスター・タイガース」と呼ばれる藤村のようなリーダーは今はいない。この夜、火をつけたのは原口文仁の先制3ランだった。この一発で「あと1本が……」とタイムリー欠乏だった打線が活気づいた。

 大リーグ・オリオールズの名将アール・ウィーバーの名言を思う。「野球は投手力、守備、そして3ランだ」と言った。

 バントや盗塁など小細工を好まず、好機での一発長打を期待する。その一方、投手を中心とした守備の堅さには注意を払った。打線のリズムを生むというわけだ。

 この夜の阪神も先発・能見篤史の好投と守備陣の堅守が光っていた。たとえば、2回表は無死満塁を三振と一ゴロ併殺で無失点でしのいだ。一ゴロをさばいたマウロ・ゴメスは丁寧な本塁送球の後、素早く一塁に戻り、併殺を完成させた。

 3回表1死では比屋根渉のライナー性飛球を福留孝介が難なく処理した。事前に好位置をとる、隠れた美技だった。

 こうして0―0均衡を保ち、打順2巡目での爆発につなげたのだ。

 9点もの大量リードでも緩まず、完封した能見と守備陣をたたえたい。安定した投手・守備は打線の活気を呼ぶ。夜の浜風が心地よかった。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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