槙原寛己氏シリーズ分析 細川「続ける」リードで山田封じ

[ 2015年10月29日 07:30 ]

<日本シリーズ ヤ・ソ4>5回無死一塁、山田は見逃し三振に倒れる

日本シリーズ第4戦 ヤクルト4―6ソフトバンク

(10月28日 神宮)
 “続きのホソ”だ。ソフトバンクが逃げ切って日本一に王手をかけたシリーズ第4戦。スポニチ本紙評論家の槙原寛己氏(52)は、3、5回のピンチでヤクルト・山田を2打席連続の見逃し三振に仕留めたソフトバンク・細川のリードを絶賛。3回は直球を4球続け、5回は初球からカーブを3球続けた。セオリーからは外れる同球種を続けさせる勇気あるリードで、山田を封じ込めた。

 日本シリーズという大舞台で、プロ14年目、35歳のベテラン捕手の経験と勇気が光った。極端ともいえるリードで、細川は第3戦で3本塁打を放ったヤクルト・山田を抑え込んだ。

 ◆3回1死一、二塁、5回無死一塁で山田を連続見逃し三振 ベテランはこういう舞台でこそ輝くものだと再認識させられた。今シリーズ初出場となったソフトバンク・細川。山田の打席では、同じ攻めはしないという綿密なプランを練っていたのだろう。初回の第1打席は結果は四球だったが、全6球中3球でカーブを要求した。そして迎えた3回のピンチ。山田の頭にカーブの残像が残る中で初球をチェンジアップで入ると、2球目からは4球連続で直球。最後は内角低めで見逃し三振に仕留めた。そして特筆すべきは5回の攻めだ。初球からカーブを3球続けて、シンカーを挟んで最後は外角低めの直球。山田はカーブをマークする中で、一番頭になかった球種とコースで完全に裏をかいた。

 前日に3本塁打した打者に緩いカーブを続けるというのは非常に勇気がいる。打者に張られると、最も怖い球種だ。さらにこの日は球審が低めのストライクゾーンを割と取っていたことから、その特性も巻き込んでの要求。外角高めならファウルで逃げられた可能性はあったはずだ。

 もちろん、摂津という“ここぞの一球”で抜群のコントロールを持つ投手と組んでこそのリードだが、同じ球種を続けて痛打されると捕手は批判を受けやすい。その意味で勇気ある攻撃的なリードだった。今季限りで現役を引退した中日・谷繁が“続きのシゲ”との異名を取っていたが、最近はこういう極端なリードをする捕手は少ない。

 ◆悔やまれるヤクルトバッテリーの5失点目 ソフトバンクに4点をリードされて、なお3回2死一、二塁のピンチ。ソフトバンクは今シリーズここまで4得点以上はなく、ヤクルトが逆襲に転じるには次の1点が水際の攻防だった。打席には8番・細川。その初球。捕手・中村は外角に大きく外し気味にミットを構えたが、館山の投球は中に入ってファウル。続く2球目も中村は同様の構えだったが、再びストライクゾーンに入ってきて三塁線を破る適時二塁打を浴びた。

 ここは石橋を叩いてでも、確実に失点を防がなければならない場面。格好悪いなどと言っていられない。満塁にしても次打者の投手・摂津で勝負すべきで、バッテリー間のしっかりした意思疎通が欲しかった。結果として、乗せてはいけない捕手を乗せてしまった。細川にしてみれば、14日のロッテとのCS第1戦では途中出場して2盗塁を許すなど、肩に不安を抱えていただろう。私は細川のスタメン起用で第4戦はヤクルトの足がテーマと見ていたが、自分の打撃でカバーした格好となった。

 ◆第5戦の鍵はヤクルト・バレンティン 王手をかけたソフトバンクにとっては、第3戦で山田に逆転弾を許した千賀がメンタル的に立ち直ったのが大きい。打たれた翌日に再び大事な場面で起用するという工藤監督らしい采配で、1イニングではなく2イニングを完璧に抑えたことで自信につながったと思う。

 一方のヤクルト。光明は2安打したバレンティン。試合前、真中監督は「きょう“までは”使います」と言っていたが、これで乗ってくるはずだ。チームの総合力では歴然とした差があるのは事実。ヤクルトが勝つには第3戦の山田のように個の力も必要で、その意味でバレンティンに注目したい。その前提として、先発が予想される石川が早い回に失点しないこと。この日の館山はソフトバンクの重量打線に対して低めへの意識、さらに寝た子を起こしてはいけないという過剰な警戒心から不振の柳田に2打席連続四球を与えた。ストライク先行でどんどん追い込んで攻める投球が必要だ。

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