初CS “負の歴史”に終止符 野村監督変わってチームも変わった

[ 2013年9月26日 06:00 ]

<中・広>帽子を脱ぎ、エルドレッドらナインを迎える野村監督(右から2人目)

セ・リーグ 広島2-0中日

(9月25日 ナゴヤD)
 飛躍への第1歩だ。広島は25日、4位・中日との直接対決に2―0で連勝し、球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出と、16年ぶりのAクラスを確定させた。就任4年目の今季、野村謙二郎監督(47)は若手とベテランの力を融合させ、掲げた「全員野球」を成果として示した。広島は10月12日から始まるCSファーストステージで、阪神とファイナルステージ進出を懸けて戦う。

 勝利の瞬間、野村監督はコーチ陣と握手をかわし、ナインをハイタッチで出迎えた。球団初のCS進出。表情は引き締まったままだ。その後はベンチ裏の一室に移動し、ビールで乾杯。「きょうは皆で素直に喜ぼう」。美酒後の会見では、一語一語をかみしめながら選手の健闘を称えた。

 「しびれる試合を勝ち切る。その目標を、去年の悔しさを、結果として出してくれた。この(CS)制度になり、長くかかったが、歴史を築き上げてくれたと思う」

 「全員野球」の成果と言っていい。「こんなにチャンスのあるチームは他にない。戦力を最大限生かしたい」。この日のスタメンが象徴的だ。1番・右翼に高卒新人の鈴木誠を抜てき。左の岡田対策にキラと丸を外し、内海が投げた5月5日、巨人戦以来のオール右打線を組んだ。競争を意識させることで、チームの底上げに成功した。

 就任4年目。背景には自身の変化もあった。強い個性。現役時代には華々しい実績がある。自分の基準が表に出てしまいがちだったが、「コーチを信頼し、任せるところは任せるようになった」「意見を聞く回数も増えた」という声を聞く。

 3年連続のCS争い。過去2年、6勝止まりだった鬼門の9月が今季は14勝6敗だ。ラストスパートにエース・前田健を中4日で起用するなど采配も当たったが、自戒を込め「ベンチと野球をしなくなった」という選手は少なくない。監督の変化とナインの成長。失敗は組織を熟成させた。

 思えば苦難の連続だった。主力の故障、不振。今季は前田智、東出、栗原を欠く。若手抜てきには使わざるを得ない事情もあった。「広島で育てられ、監督までさせてもらった。恩返しを、チームを強くしないといけない」。自ら打撃投手を務め、堂林、菊池らの若手育成に心血を注ぐ。

 一貫して求めるのは強い野手だ。長期低迷を脱出するには、心身ともにタフな選手が不可欠。そう信じてきた。「できれば固定したい」と言い続けた打線。オーダーに定着しつつある丸、菊池、松山ら若ゴイは痛みに強く、弱音を吐かない。

 投手にはムダな四球削減を求めた。が、制球自慢がいれば球威自慢もいる。同じ要求をするのは酷だが、指揮官は異論を承知で言う。「ボクの重圧に負けているようでは1軍で勝てない」。逆境に動じない強い投手になれ―。信念だった。

 「CSもあるけど、まずは(勝率)5割を目指したい。明日からまた平常心で戦いたい」

 15年間の低迷を乗り越え一歩を踏み出した。明日につながるCS進出。背番号77の挑戦は続く。ゲームはまだ終わっていない。

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2013年9月26日のニュース