【野球のツボ】下剋上の風は広島に吹く~カープ初CS出場に思う

[ 2013年9月26日 11:10 ]

初のCS進出を決め、広島ファンも大盛り上がり

 広島がセ・リーグのCS(クライマックス・シリーズ)出場を決めた。球団にとっては初めてのCS出場。実に16年ぶりのAクラスだ。カープのユニホーム経験者として、祝福するとともに、16年ぶりという時間の長さを改めて感じている。昨年も失速がなければ、CS出場を果たしていたはず。球団、首脳陣にとっては、あの悔しさを晴らすため、チームがひとつにまとまった結果と感じていることと思う。

 なぜ、これほど長く低迷が続いたのか。いろんな見方ができると思うが、一番大きいのはディフェンスがなかなか安定しなかったことだと見ている。広島が強かった時代は、守りではどこにも負けないという自負が首脳陣にも選手にもあった。ハードな練習を克服した自信がプレーに表れていた。

 だが、低迷時は、随所にミスが出て、接戦をことごとく落とすパターンにはまっていた。投手陣では北別府、大野、川口らで強力なスタッフを誇った時代のあと、前田健太が登場するまで、大黒柱と呼べるエースを中心にした陣容を整えるのに時間を必要としたことが挙げられる。先発ローテが安定し、守備力も復活した。それがCS出場を果たした最大のポイントだと見ている。

 せっかく、ここまで来たのだから、OBとしては、さらにドン欲になってほしいと期待している。まずは5割復帰だ。レギュラーシーズンでの借金を抱えたままでは、CSを勝ち抜き、日本シリーズを目指すことに関して、球界、ファンの間で賛否両論が出てくるのは避けられない。最低5割まで戻し、堂々とポストシーズンに臨んでほしいと思う。残り試合数を考えると、2位浮上はさすがに難しいと思うが、借金返済は今の調子なら出来るはずだ。

 投打のバランス、後半戦の勢いを考えると、阪神とも、巨人とも互角以上の戦いが出来るはずだ。そのためにも、16年ぶりのAクラスで喜んでほしくない。ここで目標達成と落ち着いてしまうと、CSに出るだけで終わってしまう。集中力を持続し、日本シリーズに行く、という強い気持ちで阪神、巨人に向かっていってもらいたい。後半戦で見せたチーム力は上位と比較しても劣ってはいない。下剋上の風が広島に吹く。そんな予感がしている。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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