楽天・星野新監督、始動いきなり左腕改革

[ 2010年11月2日 06:00 ]

しゃがみこんで長谷部のピッチングを見る星野監督

 左腕王国をつくる!楽天の星野仙一新監督(63)が1日、仙台市のKスタ宮城で行われた秋季練習で始動した。白いジャージー姿で笑みを浮かべながらの初日。穏やかな雰囲気の中、唯一鋭い視線を送ったのは左腕・長谷部康平(25)の姿だった。08年の北京五輪アジア予選で、自らが大学生から1人だけ日本代表に選出した逸材。先発左腕の育成が急務のチーム状況で、まずは長谷部の再生に着手する。

 熱い言葉も、厳しい指導もなかった。星野新監督は白のジャージー姿で、笑みを浮かべながら選手の動きを確認した。視察初日は静かに過ぎた。ただ、1人の左腕の前では違った。足を止め、熱視線を送った先に長谷部がいた。
 「いいものを出せずにいて、ずっと気になっていた。監督を引き受けた時に一番に思ったのが、長谷部を本来の姿に戻したいということだった。何とかものにしないと」
 08年の北京五輪で監督を務めた星野氏が、アジア予選でただ一人、アマチュアから選出したのが当時愛知工大4年の長谷部だった。プロ通算3年でわずか9勝と苦しんでいるが、潜在能力の高さにほれ込んでいる。投球フォームを固めるため、ネットに向かって投球を繰り返す左腕を見守ると、秋季練習で取り組んでいる課題を佐藤投手コーチと確認した。
 闘将本来のイメージとは、かけ離れた一日だったが、その頭の中に構想は出来上がっていた。初練習を視察後、夢を問われた指揮官は答えた。「数年後か…それで想像してくれ。選手と語らいながら、追い求めて行きたい」。見据えるのは、左腕王国をつくり上げての日本一だ。
 中継ぎ左腕には、今季53試合に登板した片山がいる。星野監督はその投球もじっくり観察した。捕手の隣に置いた椅子に座って、ブルペン投球を見守り「今季は片山が頑張っていたからね。左投手は貴重ですから」と満足げだった。
 急務は先発左腕の育成だ。チームの先発は2ケタ勝利をマークした岩隈、田中、永井ら右投手が占めている。左腕は川井、長谷部の3勝が最多と最下位に低迷する要因となった。今秋ドラフトでも即戦力左腕の八戸大・塩見を1位指名。左腕の育成が最下位に沈んだチームの浮上に欠かせないと考えている。
 岩隈はポスティング・システム(入札制度)を利用して米球界移籍が濃厚だ。そのぽっかり開いた穴を左腕が埋め、さらに2番手、3番手にも左腕が名乗り出る。その理想を現実とするため、まずは長谷部の再生に着手するつもりだ。
 指揮官としては03年の阪神時代以来となる練習視察は「ユニホームを着てないし、現場に戻ってきたという気持ちはまだ半分。まだ熱くなってないよ」と振り返った。熱くなるのはユニホームを身につけてから。闘将が静かに一歩目を踏み出した。

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2010年11月2日のニュース