ボクシング木村、ラグビー筑波大“開き直り”で番狂わせ

[ 2015年12月6日 09:30 ]

木村悠

 11月最終週、2日続けて「番狂わせ」を取材する機会に恵まれた。共通するキーワードは開き直り、試合中の修正力、そして逆転勝ちだ。

 28日は仙台で32歳の商社マンボクサー、木村悠(帝拳)が不利の予想を覆してWBC世界ライトフライ級王座を奪取。試合途中の公開採点で劣勢を知り、開き直って攻めに出たのが功を奏した。打たせないことが信条の木村らしくない戦い方だったが、6回に左ボディーを効かせて流れが変わった。王者ゲバラ(メキシコ)の武器であるボディーの射程範囲に入るため「今回はあまり重視していなかった」(帝拳・浜田剛史代表)という得意のボディーアッパーを、その後も多用。2―1の判定勝ちにつなげた。

 翌29日は東京・八王子で行われた関東大学ラグビー対抗戦グループで、筑波大が全国大学選手権6連覇中の王者・帝京大を20―17と破った。開始19分で3トライを許して0―17とリードされた前半の途中から選手同士が話し合い、ブレークダウン(タックル後のボール争奪戦)を修正。ボールキャリアーとタックラーに対する2人目の早い寄りを徹底し、劣勢を立て直した。

 筑波大にも、開き直る場面があった。3―17から後半12分と30分にトライを返したが、いずれもSO亀山宏大(4年)のゴールキックが外れて13―17。PGでは逆転できない4点差に、日本代表WTB福岡堅樹(同)も「こうなったらトライを取るしかない、と思った」という。序盤に敵陣で反則を得てもPGを狙うことができず、試合途中で「キッカーの投入も考えていた」(古川拓生監督)ほどのキックの不調が迷いのないアタックを生み、後半35分の逆転トライに結びついた。

 筑波大にはもう一つ、番狂わせを支えた「巡り合わせ」があった。古川監督は試合前日にふと思いつき、W杯イヤーに筑波大が快挙を達成している事実を書いたメモを封筒に入れてメンバー全員に渡していた。第1回W杯の87年は創部史上初めて明大から白星を挙げ、第3回W杯の95年には明大の対抗戦連勝を50で止めたほか、大学選手権1回戦で前回王者の大東大を破った――などだ。実際には試合での注意事項を記したメモの裏に書いたのだが、メモ自体、前泊用の宿舎が初めて使用するホテルだったためミーティング会場を確保できないことを見越して用意したもの。結局、ミーティングは開けたとはいえ、そのメモが「(過去の快挙は)知らなかったけど、ジンクスには乗っていかないと」(福岡)と選手のモチベーションアップに役立ったのだから面白い。

 プロップの橋本大吾主将(4年)は「大学選手権決勝で帝京大に勝って優勝したい」と話した。負けて闘志に火が付いた王者相手に、再び番狂わせを起こせるのか。大学選手権の第2ステージは13日に開幕する。(中出 健太郎)

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2015年12月6日のニュース