ボルト連覇!五輪新9秒63!伝説への第一歩

[ 2012年8月7日 06:00 ]

男子100メートル決勝でブレークらをおさえ1位でゴールしたボルト

ロンドン五輪陸上

 世界注目の男子100メートル決勝が5日に行われ、ウサイン・ボルト(25=ジャマイカ)が9秒63をマークして優勝。北京五輪で自らがマークした9秒69の五輪記録を更新し、カール・ルイス(米国)以来となる史上2人目の連覇を達成した。順風満帆だった北京五輪とは違い、挫折、故障、批判、ハプニングをはねのけての頂点到達。新たな王者の姿を見せつけて世界を震かんさせた。

 フィニッシュは準決勝と同じ40歩目。だが29歩目で減速ではなく加速に切り替わった。最高時速44・5キロ。35歩目ではここ4年間、やったことのなかった前傾姿勢に入り、必死の形相でボルトが100メートルを走りきった。

 9秒63。それを上回るタイムを出したのは3年前の世界選手権(ベルリン)で世界記録(9秒58)を樹立したボルトだけ。「世界記録の更新を狙っていた」と、人類最速の男はこの緊張感の中で時計とも戦っていた。

 「実力を疑われ、勝てないと言われ、いろいろなことを言われた。でもまだ俺が世界のベストだ」。昨年の世界選手権(大邱)の決勝ではフライングで失格。脊椎側湾症による骨盤のずれが慢性的に太腿の肉離れを引き起こすために調整にはてこずった。五輪代表選考会では腰痛を訴えて完全な走りができず、100メートルと200メートルの両種目で練習パートナーでもあるブレークに敗れた。自動車事故に女性問題。私生活でも批判を浴びた。この日の決勝ではスタート直前に泥酔した男性がボトルを投げ込むというまさかの“事件”も発生。いつ集中力が途切れてもおかしくない状況だったが、ボルトは複雑なジグソーパズルのチップを全てつないで8万大観衆の前で雄叫びを上げた。

 3年前からサッカー、バイエルン・ミュンヘンのチームドクターで、肉離れ治療の権威でもあるH・W・ミュラーボールファールト医師(69)に“救い”を求めている。ふくらはぎの血液を採取し、血小板を利用して筋肉の再生を促すPRP療法を続けた。費やした医療費は推定で3000万円。そうでもしないとロンドンで戦える自信と確信は生まれてこなかった。

 「ヨハン(ブレーク)に敗れたことで目が覚めた。彼がドアを開けてくれたようなもの」。200メートルではその“相棒”とのリマッチが待っている。どん底からはい上がってきた超速スプリンター。自身が保持する世界記録(19秒19)が再び視野に入ってきた。

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2012年8月7日のニュース