“魔物”招いた日本文理、初回に流れ失う裏目シフト 奪われた主導権

[ 2022年8月9日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権第3日・1回戦   日本文理0ー11長崎海星 ( 2022年8月8日    甲子園 )

<日本文理・海星>初回2死一、二塁、適時三塁打を放った海星・西村(撮影・岸 良祐)
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 【秋村誠人の聖地誠論】甲子園に棲む魔物の仕業か。女神がそっぽを向いたのか。0―11。点差を見れば一方的な試合だ。ただ、日本文理(新潟)と海星(長崎)との間にそんな差はない。

 日本文理は微妙な打球が失点につながり、惜しい当たりが海星の守備に阻まれた。まるで魔物に魅入られたように。象徴的な場面がある。0―2の3回1死三塁で日本文理の内野は前進守備。ここで高いバウンドの遊ゴロをジャンプして捕球した遊撃手・平田来輝(2年)は体勢が崩れ、本塁送球を諦めた。これが3失点目。逆に、3点を追う4回1死二、三塁で6番・竹野聖智(3年)は強い遊ゴロ。本塁を狙った三塁走者・高橋史佳(2年)が憤死した。

 同じ遊ゴロを巡る明と暗。その差はほんのわずかでも、試合の流れは大きく傾いた。「運、不運はある。でも、そのわずかな差には必ず理由がある」。侍ジャパンの栗山英樹監督(61)は日本ハムの監督時代、そう話した。ならば、遊ゴロにわずかな差を生んだ理由が魔物の仕業以外にあるはずだ。日本文理の好投手・田中晴也(3年)が、初回に失った2点に見え隠れするものがある。

 初回2死一、二塁。外野陣はシフトを敷いた。右翼手・玉木聖大(3年)は右翼線を詰めて前進。田中の球威に押されて内野と外野の間か、ライン際に落ちる打球をケアする狙いだ。それが、強いゴロで一、二塁間を破られた打球が、右中間も抜け三塁打になった。シフトは完全に裏目になり、玉木は「(相手の)データはあったけど、内野と連係が取れずにああいう形になってしまった」。試合の主導権を海星に奪われた。

 シフトはプロ野球でも大リーグでも主流だ。ただ、リーグ戦と違い、データの少ない相手との対戦ではもろ刃の剣。要はいかにうまく使いこなすかだろう。智弁和歌山前監督で、甲子園最多68勝の名将・高嶋仁氏(76)はこんなことを言っている。「甲子園には魔物も女神もおる。なんぼでも遭ってますよ」。甲子園で魔物を女神のほほ笑みに変えられれば最高だ。日本文理には、その伝統がある。準優勝した09年夏の快進撃のように。(専門委員)

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2022年8月9日のニュース