【内田雅也の追球】果敢で積極的なプレーで盛り上がる「グルーヴ」でいこう、待望の原点へ

[ 2022年7月24日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―1DeNA ( 2022年7月23日    甲子園 )

<神・D>4回2死、牧の右邪飛を好捕する佐藤輝(撮影・平嶋 理子)
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 前夜、原稿に書き込めなかったプレーがある。すでにリードが5点の8回裏1死一、二塁、右翼ややライン際の浅いフライで、二塁走者・近本光司が三塁を奪った。大量点差でも気を緩めず前を向いていた。果敢な姿勢がにじみ出ていた。

 その前、4―1だった7回裏無死一塁、捕手が投球をわずかにこぼしただけで、代走・植田海が二塁を奪っていた(記録は捕逸)。これもまた果敢、積極的で、高い集中力がかいま見えた。

 試合は快勝。加えて終盤の姿勢に「明日につながる勝利」とみていた。

 ほぼ毎日試合のあるプロ野球は、明日へ明日へと心がつながるものだ。気持ちとして「乗っていく」ことが肝要になる。

 前夜の果敢で積極的な姿勢はだから、この夜も続いていた。5回表無死一、二塁の守り。嶺井博希の中堅やや右前のライナーに近本が前進、ダイビングして好捕。二塁走者が飛び出しており、併殺となった。ピンチ脱出の超のつく美技だった。

 他にも阪神はよく守った。中野拓夢の遊ゴロ併殺(2回表)、アデルリン・ロドリゲスの一塁線好捕、佐藤輝明のフェンス際邪飛捕球(ともに4回表)……。球際の強さが際だっていた。新加入で初スタメンだったロドリゲスのプレーには「ベンチも盛りあがっていた」と監督・矢野燿大が話していた。これである。

 前夜の「虎フェス」で選手の登場曲は懐メロだった。佐藤輝が選んだのはアース・ウインド・アンド・ファイアの『レッツ・グルーヴ』だった。

 グルーヴ(groove)は動詞で「大いに楽しむ」。元は名詞で「溝」だ。「イン・ザ・グルーヴ」でレコードの溝に針が合って、いい音が出るというジャズ用語だ。野球人も応用し「乗りに乗って」「絶好調」といった意味で使う。

 試合のなかで、そして長いシーズンで誰もが感じる「流れ」はある。

 この夜の勝利で借金はわずかに1。あの開幕戦(3月25日)で、7点リードから、まさかの逆転で敗れ、悪夢の9連敗を喫した。一つの敗戦が翌日以降に尾を引いた。まだ春浅い4カ月前の経験を、真夏の今に生かしたい。「グルーヴ」で、乗りに乗っていこうじゃないか。きょう24日の球宴前最終戦に勝って、待望の5割だ。原点に返って「夏休み」を迎えようじゃないか。=敬称略=(編集委員)

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2022年7月24日のニュース