真っ向勝負貫く姿勢に見た大阪桐蔭の“真の強さ”

[ 2022年4月1日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会最終日・決勝   大阪桐蔭 18―1近江 ( 2022年3月31日    甲子園 )

<近江・大阪桐蔭>優勝した大阪桐蔭ナイン(撮影・成瀬 徹)
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 【秋村誠人の聖地誠論】正攻法で、力で圧倒していく。相手の弱みを攻めたりしない。打席に立つ誰もが真っ向勝負だ。そこに、大阪桐蔭の“真の強さ”を感じさせられた。

 昨夏の甲子園で敗れた近江(滋賀)との決勝。相手のエース・山田陽翔(3年)は左足を痛め、球数制限もある。どう攻略するかに注目した。相手の弱点を突くのは勝負の常とう手段。でも、それをよしとしない。真っ向勝負は、手負いで挑んでくるエースに対する礼儀だったのだろう。

 初回。先頭打者の伊藤櫂人(3年)は、左翼線の浅い飛球を遊撃手・横田悟(2年)が落球する間に三塁を陥れた。最初から全力で走っていなければ三塁まではいけなかったはずだ。無死三塁となって近江の内野陣は定位置。軽く当てて内野ゴロでも1点という場面だったが、2番・谷口勇人(3年)は内野ゴロなど狙わず、しっかり振り切って右前へ先制打を放った。その後も正攻法で攻め立てて山田を攻略。ファウルで粘って球数を増やしたり、セーフティーバントで揺さぶったりしない。走るのも打つのも全力。そこに大阪桐蔭の強さを見た。

 思えば03年夏の甲子園決勝。常総学院(茨城)の名将・木内幸男監督は、相手の東北(宮城)のエース・ダルビッシュ有(現パドレス)が右足を痛めていると聞き「バントで崩して勝ってもヒーローになれない。ダルビッシュを打って勝て」とハッパを掛け、逆転勝ちで日本一になった。当時と状況は違う。だけど、手負いの相手を全力で倒しにいく気持ちは同じだろう。

 ただ、傷だらけで挑んだ近江・山田にも強さを感じた。出場辞退した京都国際の無念も背負って投じた594球は、大阪桐蔭・西谷浩一監督の「魂を込めて投げている」という言葉通りだ。準優勝旗を手にした山田を見て思った。夏にまた、甲子園で強い大阪桐蔭に挑んでほしいと。(専門委員)

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