能代商 秋田県勢14年ぶり夏1勝!!

[ 2011年8月10日 06:00 ]

<神村学園・能代商>甲子園初勝利を決めガッツポーズの保坂(右)と岳田(左)

第93回全国高校野球選手権大会1回戦 能代商5―3神村学園

(8月8日 甲子園)
 1回戦4試合が行われ、第2試合で能代商(秋田)が、5―3で神村学園(鹿児島)を逆転で撃破。甲子園初勝利を挙げると同時に、秋田勢として14年ぶりに夏の大会の初戦を突破した。プロ通算284勝の元阪急・山田久志氏を親戚に持つ山田一貴主将(3年)が3安打を放つ大活躍。また、第4試合では戦後最長記録に並ぶ7年連続出場の智弁和歌山が、3番・山本隆大外野手(3年)のバックスクリーン弾などで花咲徳栄(埼玉)に11―1で大勝。高嶋仁監督(65)は春夏通算62勝目で、自身の持つ甲子園大会最多勝記録を更新した。

 甲子園に初めて校歌が鳴り響く。それも、雪辱を誓い続けた鹿児島勢に勝っての凱歌だ。秋田勢としても夏の甲子園で14年ぶりの初戦突破。大きな意味を持つ1勝となった。

 「鹿児島代表に勝つために、一年間やってきた。つらい練習を乗り越えて自信が持てた」

 主将の山田一が会心の笑顔を見せた。祖父・久栄さん(74)のいとこが、アンダースロー投手として通算284勝を挙げた山田久志氏だ。昨夏の甲子園初戦。鹿児島実に0―15と大敗。自身も3打席連続三振と辛酸をなめた。そこから雪辱の旅路が始まった。

 同戦のイニングスコアを横10メートル、縦1メートルの横断幕に記し、室内練習場に掲げることで、悔しさを一時も忘れないようにしてきた。同時に重さ1・2キロの竹バット20本を購入。そのバットを手に加圧ベルトを巻いてのティー打撃を敢行した。

 そして迎えたこの日。4回。1死一塁から山田一が中越え二塁打。二、三塁とし、暴投での1点を呼び込んだ。これが3度目の出場で、同校が22イニング目に甲子園に刻んだ初得点だった。さらに2点を追う6回の攻撃前。工藤明監督から「悔しい思いをして、たくさん振り込んできたのに、成果を出さずに終わるのか!」とゲキが飛んだ。その言葉に目覚めたかのように、1死二、三塁から山田一が1点差に迫る右前適時打。4番の一撃で点火した打線は4長短打に犠飛で一挙4点を奪って逆転に成功した。

 初戦を前に山田久志氏から激励されたという山田一は「(久志氏は)山田家の伝説の人。いいところを見せられてよかった。堂々とやれと言われてその通りできたので高い料理をごちそうしてほしい」と笑った。生後5カ月で母・基子さん(享年35)、中2で父・義信さん(享年47)をそれぞれがんで亡くした山田一。両親の他界後、自分を育ててくれた祖父、祖母・シゲ子さん(74)にも恩返しの白星となった。

 13年4月には能代北と統合される予定で、工藤監督は「統合前に能代商の校歌を聞けて感慨深い」と目を潤ませた。1勝だけでこの夏を終わらせるつもりはない。

 ≪秋田勢の連続初戦敗退≫能代商が勝利し、98年から続いていた秋田勢の連続初戦敗退が13年でストップした。1都道府県1代表制となった78年以降では、青森の11年(78年~88年)を抜きワースト記録を更新していた。不出場の年を挟む連続大会では山形(36~68年)、青森(70~88年)と並ぶ13大会連続初戦負けのワーストタイで止まった。

 ≪秋田県勢の前回勝利≫97年1回戦。秋田商3年・石川(現ヤクルト)と浜田(島根)2年・和田(現ソフトバンク)の両左腕が対戦。秋田商は1―3で迎えた9回、無死一、二塁から送りバントが相手の2つの悪送球を誘い同点。満塁策の後、打者の石川が和田からストレートの押し出し四球を選び逆転サヨナラ勝ち。石川は「自分でもストライクが入るか分からない。同情したし、喜んではいけないと思った」と相手を気遣った。

 ▼山田久志氏(秋田県能代市出身、能代高卒、元中日監督)何より秋田県勢が頑張ってくれて良かった。一貴とは一昨日に会って激励したところで、心身ともに成長がうかがえてうれしかった。

 ▼ヤクルト・石川(97年夏に秋田商のエースとして初戦突破)試合はテレビで見ていました。母校ではないけど気になっていましたし、勝って良かった。彼ら(能代商)がずっと連敗してきたわけじゃないけど、プレッシャーもあったと思う。その中で能代らしい野球をして勝って、凄くうれしい。僕も原点を見つめ直せるというか、懐かしい気持ちになりました。(能代商の保坂投手は)僕の高校の時と似ている。スピードはないけど、いろいろな球種を使って打者のタイミングをずらして。僕も高校時代は球速がなくて、135キロくらいでしたね。

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2011年8月10日のニュース