惜しい!能見ノーヒッターあと6人 「江夏」ならず

[ 2011年8月10日 06:00 ]

<中・神>8回、先頭の平田に左前打を打たれた能見は悔しそうな表情

セ・リーグ 阪神1-0中日

(8月9日 ナゴヤD)
 試合後。阪神・真弓監督は開口一番「あと何人だった?」と、誰に聞くわけでもなくつぶやいた。スタンドの観衆も快挙を意識し、ざわめき始めた直後だった。力ない打球が左翼手・俊介の前にぽとりと落ちると、ため息と歓声が交錯した。能見が8回、中日先頭の平田に初安打を許し、ノーヒットノーランの夢が消えた。

 「興味ないよ。空気も重かったし、自分のことよりチームが勝ったのが一番」。左腕は動揺を全く見せない。2死一、二塁とピンチを広げたが、続く荒木を左飛に仕留めた。8回1安打無失点。今季6勝目を手にし、チームに今季初の4連勝をもたらした。

 細身の体がしなるように躍動する。直球の威力、変化球の切れともに抜群。制球が定まらず4四球を与えたが、走者を出しても得点を許す雰囲気はまるでなかった。先発全員から奪った三振は、1試合で自己最多の13個。昨季チームが2勝10敗だった鬼門・ナゴヤドームもどこ吹く風の快投に「しっかり腕が振れて、ストレートでファウルが取れた。それが一番」と満足感をにじませた。

 打撃でも0―0の2回1死一、三塁で「うまいこと野手のいないところに飛んだ」という右前打を放ち、虎の子の1点を叩き出した。まさに圧巻の独り舞台。73年8月30日の中日戦(甲子園)では阪神・江夏豊が延長11回に自らサヨナラ本塁打を放ち、1―0でのノーヒットノーランを達成。その「再現」こそならなかったが、プロ7年目の32歳は、残念がることもなく涼しい顔でサラリとこう言った。

 「こういう試合を取ればチームもいい感じになるでしょう。勝負は8、9月。そこでしっかり勝てば、(優勝も)見えてくる」。その言葉には、エースのプライドが詰まっていた。貯金は2。3日に最大8ゲーム差をつけられた首位・ヤクルトとは、6日間で半分の4ゲーム差にまで縮めた。真夏の虎。その進撃は止まらない。

 ≪江夏豊のノーヒットノーラン≫阪神時代の73年8月30日の中日戦(甲子園)。中日・松本と投げ合い、相手打線を無安打に抑えたまま延長戦に突入。そして延長11回、自ら右翼ラッキーゾーンへの一発を放って1―0でサヨナラ勝ちした。142球を投げ打者34人を7奪三振2四死球。史上53人目のノーヒットノーランだったが、延長戦での達成はいまだ江夏しかいない。

 ≪1安打完封勝利≫阪神が能見、藤川の継投で1安打完封勝利。阪神が被安打1本以下で勝ったのは、04年10月4日広島戦で井川がノーヒットノーランして以来7年ぶりとなる。この日は2回に先発の能見が唯一の適時安打。投手のV打による1―0勝利は、阪神のムーアが03年5月17日巨人戦で記録して以来8年ぶり。

 ▼中日・平田(8回、能見からチーム唯一となる安打)フォークが切れていたので、追い込まれる前に打とうと思いました。

 ▼江夏豊氏(ナゴヤドームでテレビ解説)私はたまたまできたけれど、能見くんもよく投げた。こういう記録は大量得点はいらないけれども、1―0は苦しい。

 ▼阪神・藤井彰(能見について)真っすぐが切れていて、強弱をつけられた。

 ▼阪神・藤川(能見の後を受け25セーブ目)1―0で登板させてもらえるのは信頼の証拠。期待に応えようと思った。

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2011年8月10日のニュース