命懸けのスノーボード人生だからこそ「全力で楽しんで」平野歩夢の兄・英樹さんが贈っていたエール

[ 2026年2月11日 20:00 ]

ミラノ・コルティナ冬季五輪第6日 スノーボード   男子ハーフパイプ予選 ( 2026年2月11日    リビーニョ・スノーパークなど )

25年12月、取材に応じ、弟・歩夢へ贈る言葉をしたためた平野英樹さん
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 スノーボード男子ハーフパイプ(HP)は、11日(日本時間12日未明)にリビーニョ・スノーパークで予選が行われる。この舞台に4大会連続出場で、2連覇の懸かる平野歩夢(27=TOKIOインカラミ)が立つ。わずか25日前、試合中の転倒で腸骨の骨折と右膝の重い打撲を負った男が、奇跡のような復活劇を遂げて――。

 昨年12月15日、自身のシグネチャーモデルのゴーグル発売イベントで、平野歩はデザインに込めた思いをこう語った。「自分がこれまでスノーボードに懸けてきた思いとか、『命』という字を、どこかに入れたかった」。バンド部分には交流があるという日本BE研究所所長の行徳哲男氏が揮毫(きごう)した「命」がグラフィックで描かれている。

 なぜ「命」なのか。「いつどこで命を落とすか分からない(競技)レベルまで来ているので、いつそうなってもいいように、悔いなく人生(を過ごす)というか、命を懸けていく思い、覚悟してやっていかないと」。24年に結婚し、妻との間に新たな命を授かったことも、命という文字、命そのものへの思いが強くなる出来事だった。

 「基本的に平野家のワードとしてよく出てくるのが、『命』なんですよ」

 そう語るのは、4歳年上の兄・英樹さん。「ダブルコークが(世界最先端の技として)出た当初も、壁が4メートルのパイプで、やれるようにならないといけないとなって。パイプに体育館のマットを敷いてやったが、本当に命懸けだった」。まだ年端もいかない2人にとって、父の厳しさは、まさに命を取られる恐怖心が伴ったに違いない。もちろん英功さんに、わが子の命を取る意思があるわけがない。それでも1年365日、1日24時間、そうした切迫感と隣り合わせでスノーボードに取り組んできた2人にとって、「命」は意識せざるを得ない言葉だった。

 17年3月の肝臓内部破裂など、命を落としかねないケガを何度も負ってきた平野歩は、不幸にも1月17日、再び大きなケガを負った。それから21日後に雪上に戻り、25日後の11日、4度目の五輪の舞台に立つ。「着地の負担だったり、体も疲れてくるので、なかなかいい状態にならない。むしろ悪い方向に、ケガ(の箇所)が痛んできている感覚がある。本番に懸けていければと、なるべく温存しているつもり」。まさに満身創痍。そんな弟に、英樹さんはエールの言葉を贈っている。

 「全力で楽しんで」

 英樹さんが取材に応じてくれたのは、昨年12月末。もちろん今の平野歩に、楽しむ心の余裕など、これっぽっちもないだろう。それでも命を懸けてスノーボードに取り組んできた弟だからこそ、4年に一度くらいは、周囲の期待も身に降り注ぐプレッシャーも、全てを解き放って楽しんでほしい――。

 厳しい勝負の世界。たとえ奇跡は起きなくとも、兄の思いは弟に届くはずだ。(阿部 令)

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