陵侑 日本で復活V 自国開催&今季初 日本のエースが札幌で「大きな一歩」

[ 2023年1月21日 04:55 ]

ノルディックスキーW杯ジャンプ男子 札幌大会 ( 2023年1月20日    札幌・大倉山ジャンプ競技場 )

今季初優勝を果たし、笑顔を見せる小林陵(中央)(撮影・高橋 茂夫)
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 個人第14戦が行われ、昨年の北京冬季五輪で金と銀の2つのメダルを獲得した小林陵侑(26=土屋ホーム)が1回目2位から2回目に逆転し、合計271・5点で今季初優勝。通算28勝目、自国開催では初優勝となった。コロナ禍で2季続けて中止され、3季ぶりに戻って来た札幌での男子W杯。日本のエースが“地元”で復活Vを飾った。

 あの時の感動がよみがえった。五輪金メダリストが自国開催でファンの大歓声に応えた。1回目135メートルで総合トップのクバツキ(ポーランド)に次ぐ2位。迎えた2回目は長時間待たされても集中力を切らさなかった。130メートルを飛んでガッツポーズ。同い年の中村直幹(26=フライングラボラトリー)と抱き合った。前回20年の佐藤幸椰(27=雪印メグミルク)に続く札幌大会優勝だ。

 「いいジャンプができてうれしい。勝てたのはサプライズ。今季は準備不足でここまで苦しんだが、ここで勝てたのは大きな一歩となる」。W杯札幌大会ではこれまで3位が最高。岩手県八幡平市出身ながら札幌が活動拠点で、“地元”での優勝は悲願だった。

 今季は不振に苦しんだ。個人第1戦(ポーランド・ビスワ)の7位が最高。1桁順位も1度きりだった。股関節の状態が思わしくなく「体も良くないし、道具もかみ合っていなかった」と振り返る。6日の個人第12戦後に遠征を切り上げて帰国すると、自分のジャンプとじっくり向き合った。日本チームとして札幌・大倉山で飛躍練習を行い、小林陵は最後まで1人だけ居残って「札幌のW杯でいいジャンプをしたい」と復調に取り組んだ。

 14、15日の大倉山での国内2戦は欠場。「新しいスーツが来なくて、負けて自信を失うのも嫌なので」と冗談交じりで語りながらも、その期間を復調への足がかりの時間に費やした。建物の上から選手たちの飛躍を見て、自身のジャンプのイメージを膨らませた。小林陵には一つの思いがあった。「今シーズンはあまりいいところがなかった。札幌では3回チャンスがある」。北京五輪で熱い声援を送ってくれたファンに最高のジャンプで恩返しを――。意地とプライドを懸け、このW杯3連戦に全てをぶつけるつもりだった。

 この試合から新調したジャンプスーツは揚力を受けやすいようにカッティングを大幅に変えた。「後半の伸びも変わってくる」とできる限りの準備を整え、昨年2月以来のW杯勝利を手にした。個人第15戦、第16戦と続く週末。「明日からもいいジャンプをしたい」と躍進を誓った。(武田 政樹)

 ▽20年のW杯男子札幌大会 2月1日の個人第17戦で佐藤幸椰が1回目6位から2回目に138・5メートルを飛んで逆転優勝。12年札幌大会での伊東大貴(雪印メグミルク)以来、8季ぶりとなる日本勢の国内W杯制覇を果たした。同戦で小林陵は1回目首位だったが、2回目に失速して15位。翌2日の第18戦では小林陵が3位で表彰台に上がったが「なかなか勝たせてくれないですね、大倉山は」と悔しがった。

 《葛西繰り上げ出場も0.4点及ばず予選敗退》渡部陸太(東京美装)が体調不良で欠場し、繰り上げで出番が回ってきた葛西は0.4点差であと一人及ばず予選を通過できなかった。前日に出場できるという連絡を受け、「完全に出られないと思って暴食していた。W杯に出ると気持ちを切り替えるのも大変だった」と振り返った。21日の個人第15戦も予選から出場を予定し、「燃えてきた」と自身の持つW杯通算569試合のギネス世界記録の更新を目指す。

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2023年1月21日のニュース