【上水研一朗の目】勝敗を分けた阿部一二三の「余裕」と丸山の「気負い」 柔道世界選手権

[ 2022年10月8日 18:14 ]

柔道世界選手権第2日 男子66キロ級決勝   ○阿部一二三(優勢 4分)丸山城志郎● ( 2022年10月7日    ウズベキスタン・タシケント )

柔道の世界選手権男子66㌔級決勝で丸山城志郎(下)を下し優勝した阿部一二三(共同) 
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 実力拮抗(きっこう)する2人の勝敗を分けたのは、勝負所で「余裕」があった五輪王者の阿部一二三と、「気負い」が出た丸山の差と言える。開始から両者アグレッシブに攻める展開で、阿部一だけ与えられた2つめの指導が試合の節目となった。後がなくなりギアを入れ直した阿部一に対し、丸山もさらに手数を増やして試合展開はスピードアップ。そこでやや不十分に入った内股に小外掛けを合わせて技あり。阿部一は初戦からじっくり相手を見ながら仕留めていたように、決勝でも勝負所をしっかりと見極めた。

 19年世界選手権での対戦では、劣勢で焦りから勝負を急いだところを突かれた阿部一だが、今回は指導2で追い込まれた後も冷静だった。これは五輪を取ったことで生まれた余裕が成せる業。20年末の五輪代表決定戦など、さまざまな経験値を積んできたことが大きくものを言っている。

 これで阿部一がパリ五輪代表争いでもリードしたのは間違いないが、両者の争いは今後も続くとみる。準々決勝では五輪銀のマルグベラシビリ(ジョージア)を内股で豪快に投げ、準決勝でも五輪銅のアン・バウル(韓国)を圧倒した丸山が「世界2位」の実力者であることは異論の余地がない。実力で選べば9人が出場できる来年5月の世界選手権でも代表入りが順当。何度勝っても2人代表が続けば、阿部一の方が精神的にきつくなると思われる。

(東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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