パラ競泳・富田宇宙 視力衰え宇宙飛行士諦めるも夢舞台で金メダルへ「楽しみたい」

[ 2021年8月21日 05:30 ]

公式練習する競泳男子視覚障がいの富田宇宙
Photo By 共同

 東京パラリンピック(24日開幕)の公式練習が20日、各競技会場で始まった。競泳会場の東京アクアティクスセンターでは競泳の日本代表が初練習。男子視覚障がいで初出場ながら有力なメダル候補に挙がる富田宇宙(32=日体大大学院)が水の感触を確かめ、25日の競技開始に備えた。

 午前7時から1時間半行われた公式練習。富田は他の代表メンバーとともに会場の雰囲気を確かめた。この日は取材対応はなかったが、32歳で迎える夢の初舞台。「泳ぎの調子が良くても悪くても、一直線に進んでいくつもり。大会を思い切り楽しみたいという気持ちが一番強い」と意気込みを語ってきた。

 進行性の病気で視力が衰え、3歳で始めた競泳は高校時代で一区切り。「宇宙のように広い心を持つように」という両親の願いで命名され、名前通りに目指した宇宙飛行士の夢も諦めた。しかし、就職後に取り組み始めた視覚障がい水泳で徐々に力を付け、出場を逃した16年リオデジャネイロ・パラリンピック後にクラス分けが変更されてトップの仲間入り。19年世界選手権では400メートル自由形(視覚障がい11)と100メートルバタフライ(同)で銀メダルを獲得した。

 コロナ禍の影響で1年延期の末にたどり着いた東京パラ。メインの400メートル自由形で金メダル、100メートルバタフライでも日本のエース木村敬一とのワンツーフィニッシュが期待される。「メダルを期待していただき、自分も目指して頑張っている」と意気込みを語る一方で、開催の意義にも思いを巡らせる。

 「自分たちだけが楽しめばいい試合ではない。たくさんの人が困難な状況にある中だからこそ、パラアスリートが積み上げてきた努力が皆さんの気持ちにもきっと届くと思う」
 新型コロナという強い逆風の中、結果とともに困難を乗り越えてきた生きざまを示す。

 ◇富田 宇宙(とみた・うちゅう)1989年(平元)2月28日生まれ、熊本県出身の32歳。済々黌高2年時に進行性の網膜色素変性症と診断され、現在は全盲。日大では競技ダンス部に所属し、全日本学生選抜選手権にも出場。就職後に23歳から視覚障がい競泳に取り組み、パラリンピックはリオ大会に続く2度目の挑戦で初出場。1メートル68、62キロ。

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