ライバルに有利でも…「楽しみ」と言い切ったリーチ 23年ラグビーW杯

[ 2021年3月3日 09:30 ]

リーチ・マイケル
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 2月26日、早くも23年ラグビーW杯の試合日程が発表された。本番は2年半以上先だが、昨年は代表の全ての試合がキャンセルとなった日本にあって、久しぶりに2年前の高揚感が蘇るような、ワクワクする話題となった。

 1次リーグD組の日本は9月10日に米大陸予選2位、同17日にイングランド、同28日にオセアニア予選1位、10月8日にアルゼンチンと対戦する。発表直後の会見で藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが指摘したように、同組2強と偶数戦目に当たる流れは、19年大会と同じ。2年前に調整の仕方、メンタルの作り方を一度経験したメリットは大きく、藤井氏も好感を持っている様子だった。

 決定を受けて、翌日のクボタ戦後に会見に応じたリーチ・マイケル主将(東芝)は、「やっとフェアに戦える」と感想を漏らした。ホスト国だった19年大会は全試合間で中6日以上が確保され、日程的に恵まれた日本。一方で15年大会は南アフリカ戦から中3日でスコットランドと対戦した。中3日でティア1と連戦した実体験は、いまだに心と体に苦しい思い出をよみがえらせるゆえの本音だろう。

 興味深かったのは、その後に発した言葉だった。「いろいろなチームに勝つ可能性が広がる。特にフィジー、サモア、トンガあたりがよりフレッシュな状態で戦えて、それが楽しみ」。フィジー出身の母の血を受け継ぐゆえか、あるいは人一倍スポーツマンシップを大切にするゆえか。第3戦で対戦するオセアニア予選1位は、サモアかトンガ。決勝トーナメント進出を争う立場のライバルが利することになっても、「楽しみ」と言い切るリーチは、やはり清々しい男だ。

 実際にW杯の歴史を振り返ると、太平洋諸島の3カ国が、いかに不利な条件を強いられてきたかが分かる。各5チーム4組の1次リーグが行われるようになったのは、03年オーストラリア大会から。この大会で1次リーグD組に入ったトンガなどは、中3日→中4日→中4日で4連戦し、4連敗している。格差は大会を重ねる度に是正され、19年大会は南アフリカ、イングランド、ニュージーランドなどの伝統国も中3日の連戦が組まれたが、世界のパワーバランスに大きな変化はなかった。23年は全てのチームの試合間隔が中5日以上確保されることで、これまで不利な条件を強いられてきた国ほど、恩恵は大きい。

 試合日程外の面を見ても、来年にはスーパーラグビーに3カ国をベースとするチームが2つ加わり、既存のニュージーランド、オーストラリアの各5チームを加えた計12チームによる大会開催のプランが浮上し、一部は準備が進む。今は主に欧州など、食べるために海外でプレーする3カ国の代表選手たちが、自分の国に戻ってプレーすれば、それぞれの国代表の強化面でも恩恵は大きいはず。23年にすぐ成果が出るかは分からないが、ゆくゆくは実を結ぶ可能性を秘めている。

 緻密な戦術を練り、それを選手に落とし込んで過去2回のW杯で強豪を破ってきた日本にとっても、もちろん試合間隔がしっかり確保されるのはプラスに働くが、恩恵を受けるのは日本だけではないということは覚えておきたい。2年後、追い付き追い越すべき「上」がまだまだ多い日本だが、「下」を侮れば足をすくわれる。そんな大会になるに違いない。(記者コラム・阿部 令)

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2021年3月3日のニュース