全柔連・山下会長が辞任示唆、パワハラ隠ぺいか 橋本新会長誕生から8日…五輪また逆風

[ 2021年2月27日 05:30 ]

講道館で会見に臨んだ全日本柔道連盟の山下泰裕会長
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 全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長(63)が26日、全柔連事務局内で発覚したパワーハラスメント問題の責任を取り、会長職を辞任する可能性を示唆した。山下氏は日本オリンピック委員会(JOC)会長など要職を兼務しており、全柔連トップとしての職責を果たせなかったと説明。隠ぺいは否定したものの、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長後継問題に続くスポーツ界のトラブルは、今夏の祭典への機運醸成に悪影響を与える可能性もある。

 パワハラ問題発覚の発端となったのは、昨春に全柔連事務局内で発生した新型コロナウイルスの集団感染の原因を調べるために発足した、調査委員会による聞き取り調査だった。この中で複数の職員から前事務局長による罵倒や業務時間外の労働強要などの申告があり、コンプライアンス委員会が改めて調査を開始。昨年11月下旬、パワハラを認定する報告書が山下会長らに提出された。

 午後、東京都文京区の講道館で緊急会見に臨んだ山下会長は、冒頭で問題の経緯を説明。その後「私の責任が非常に大きい。JOC会長になり、こちらに全精力を傾注しないといけなかった。全柔連会長の職責を果たせなかった。ここに一番の責任がある」と陳謝した。さらに「自分だけでは勝手に判断できないが、全ての可能性がある」と続け、全柔連会長職の辞任を示唆した。

 17年6月から会長を務める山下氏は、19年6月には東京五輪の招致疑惑を巡り辞任に追い込まれた竹田恒和前会長の後を継ぎ、JOC会長にも就任。その他に組織委副会長、東海大副学長などを兼務し、事務局での執務は「月に1回程度」(中里壮也専務理事)だという。こうした中、13年の不祥事発覚以降、組織改革が進んだかに見えた全柔連で再び問題が発覚。「一人でいろんな要職を務めていくのは正直、私には難しい」とも吐露した。

 一方で、コンプライアンス委員会から報告書を受け取りながら、事案を公表しなかったことについて「隠ぺいしているのではないか、という報道には憤慨している」と語気を強めた。前事務局長は昨年12月以降、音信不通。内部規定では弁明機会を与える必要があるため、処分を下せないまま自主退職しており、「退職は報告(公表)するが、それ以上は必要ない。正副会長(計5人)で一致した考え」と非公表の正当性を強調した。

 組織委の会長後継問題では密室人事が世論の反発を招いたが、非公表を提案した一人は山下氏だった。橋本聖子新会長が誕生し、後継問題が決着した今月18日からわずか8日。今夏の祭典に向けての機運に、スポーツ界はまた、自ら冷や水を浴びせようとしているのかもしれない。

 ◆山下 泰裕(やました・やすひろ)1957年(昭32)6月1日生まれ、熊本県出身の63歳。東海大2年時に19歳10カ月の史上最年少で全日本選手権初優勝し、その後9連覇。世界選手権は81年の2階級制覇を含む3連覇。84年ロサンゼルス五輪無差別級金メダルを獲得し、同年国民栄誉賞受賞。203連勝のまま85年に28歳で引退。国際柔道連盟理事、全日本男子監督、強化委員長などを経て17年に全柔連会長に就任。19年6月からJOC会長。

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