最後まで密室だった新会長人事、残ったのは国民の不信感だけ

[ 2021年2月17日 21:55 ]

組織委新会長、橋本聖子五輪相に一本化

退庁時に取材に応じた橋本聖子五輪相(撮影・安田健二)
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 森会長が辞任を表明した時、真っ先に流れてきたのが橋本五輪相の“横滑り”就任で、その後二転三転が伝えられたものの、結局は最初の案に逆戻り。これで「透明性が確保できた」と思う人がいったいどれだけいるのか、どう好意的に考えても首をかしげざるを得ない。

 「マスコミが殺到する」「事前に何らかの働きかけの恐れがある」というあやふやな理由で他の理事の同意を得ないまま検討委員会のメンバーを決め、会議の内容も一切非公表。それでいて「場所も時間も明かさない」はずの会合はマスコミに筒抜け。18日にまだ3回目の検討委員会が予定されているにもかかわらず、早々と「橋本氏に一本化」の情報が流れる。これでは情報操作と言われても仕方ないし、たとえこれが実際に検討委員会で論議を交わした上での結論だったとしても、「最初から出来レースだったのでは」という不信感をぬぐい去るのは難しい。

 今回の森会長の“女性蔑視発言”から始まった一連の騒動を収める上で、何よりも大切なことは「国民の信頼を取り戻す」ことだったはずだ。そのためにはまず検討委員会のメンバーを公表し、選ばれた理由をきちんと説明すべきだった。もちろん、人事に関することなので協議内容まですべてオープンにしろとは言わない。しかし最低限、通常の理事会のように会議の冒頭は公開すべきだったし、密室だけで一本化するのではなく、複数の候補者を選考した上で最終判断を理事会に諮るのが筋だったのではないか。

 コロナ禍で五輪を開催するということは、国民に「覚悟」を求めることにほかならない。だからこそ国民の支持は何よりも大切なはずなのに、「女性蔑視で批判されたから次の候補は女性で」と安易に事を進められたのではどうにもならない。五輪という巨大イベントにうごめくそれぞれのエゴに振り回された揚げ句、今回の騒動でいったい何が残ったのか。残ったのは国民の不信感だけだ。(編集委員・藤山健二)

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2021年2月17日のニュース