桐生6年ぶり日本一 男子100メートル10秒27接戦制した「1速でポン」

[ 2020年10月3日 05:30 ]

陸上・日本選手権第2日 ( 2020年10月2日    新潟市・デンカビッグスワンスタジアム )

男子100メートル決勝、力走する(左から)飯塚翔太、竹田一平、桐生祥秀、多田修平、小池祐貴、ケンブリッジ飛鳥
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 男子100メートル決勝は、桐生祥秀(24=日本生命)が10秒27(向かい風0・2メートル)で6年ぶり2度目の優勝を果たした。5人がゴールになだれ込むような大接戦を制し、今季最終戦を勝利で締めくくった。コロナ禍での地道な取り組みが実を結び、来年の東京五輪代表入りへ弾みを付けた。

 接戦になると崩れたのは、もう過去のことだ。桐生が大接戦を制した。多田が飛び出し、ケンブリッジ、小池、飯塚が中盤から加速。5人がゴールになだれ込むような展開で、体一つ前に出ていた。「今年は中盤から後半に落ちない。自信を持っていけた」。10秒0台を4度出した今季3戦同様、自分が思い描く走りができていた。

 復活Vの鍵は序盤にあった。スムーズに速度が上がるようスタートを改善。イタリア高級車「マセラティ」のブランドアンバサダーを務める桐生の車好きを考慮して、土江寛裕コーチがレーシングカーに例えた。

 「今まで2速や3速のギアで発進していたのを、1速でポンと楽に出るようにした」

 号砲への反応時間はトップの0秒127を記録した。スタートブロックの幅を広げて腰の高さを低くして「1速発進」を実現。それを今までできなかったのは、低い姿勢に耐える筋力がなかったからだという。

 緊急事態宣言下で、桐生は筋トレ器具を購入し、自宅にそろえた。「低さ」にこだわって体を鍛えた。感染症対策で、体を動かすのは「朝5時、夜なら9時以降」と決め、日々走った。人里離れた山奥で、坂ダッシュ中心の秘密トレもした。車体をバラしてチューニングをするように、体を一からつくり直した。

 気分屋の地道な取り組みは「プロになって、これで生活していくんだ」という意識の芽生えが要因。1月の一般女性との結婚も無縁ではない。「甘えがないシーズンだった」という成果は筋肉に表れた。土江コーチは「大学時代は70キロ台だと故障注意報が出ていたが、今は70キロ超でキープできている」と身の詰まりを実感している。

 6年ぶりに日本一に就き「毎年、勝つ選手の中に名前があるけど、勝てなかった」と口にしつつも、笑顔はない。10秒27の記録に「勝ち切れたのはでかいけど、タイムは速くない。来年は速さと強さを兼ね備えて帰ってきたい」と宣言。東京五輪代表が決まる来年大会へ、速さを追求する。 

 ▼多田修平 前半はリードできたけど、後半で力んでしまった。優勝を狙っていて圏内にいた分、悔しい。(10秒34で5位)
 ▼飯塚 翔太 生で観戦するのが楽しいと言ってもらえるように頑張った。200メートルでは優勝を目指したい。(10秒33で4位)

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