追悼連載~「コービー激動の41年」その6 妥協のない青春時代 猛特訓は日常の光景
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【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】10代の半ば。ギターを弾き始めた生徒もいれば、初めてラブレターを出した人もいるかもしれない。たとえ運動部に在籍していても、興味の対象は異性や遊ぶことだったかもしれない。ところがコービー・ブライアントには父ジョーに見られたような浮わついたところがまったくなかった。チームメートがテレビゲームに熱中しているとき、彼は宿題をやっているかバスケの個人練習をしているかのどちらかだったという。
それもハンパではない。まず自宅の近所を毎日5~10キロ走った。しかも倒れそうになるほどのペースで…。自己の限界に日々挑戦する信じられない少年だった。(監督に怒られるまで必死に走らなかった私自身とは大違いである)
縄跳びとウエート・トレーニングもメニューのひとつ。近所のコートで練習する際には、リングの高さを9フィート6インチ(290センチ)と通常より15センチ低くしてダンクシュートに取り組んだ。シュートのバリエーションを増やして創造性を高めるためだった。しかもその練習時間は数時間に及んだという。
「もし最高のプレーヤーになりたくないなら、やっている意味がない。自分はコートに立った人間の中の最高のプレーヤーになりたかった」。その姿勢はNBAのスター選手となってからも貫かれるが、ティーンエージャーにしてすでに彼の心はNBA級だった。
ローワー・メリオン高校(フィラデルフィア)の1年生のシーズンが終わったあともバスケ漬けの日々。それはコービーにとって生活の一部で、当時40歳だった父ジョーとは毎日1対1をやり続けた。
「最初はプレーさせてもらったが、2度目は確実に止められた。自分よりスピードもあった」。体格で及ばないコービーにとって206センチの父親に負けてしまうのはむしろ当たり前だったはずだが、14歳の彼はNBAとイタリア・リーグで活躍した“ライバル”に真剣に勝とうとしたのである。
16歳になろとしていた高校2年生。身長はすでに6フィート5インチ(196センチ)になっていた。ACES(ローワー・メリオン高校のニックネーム)は16勝6敗。コービーは平均22得点、10リバウンドをマークし、チームはリーグのドアマット・チームから優勝を争うトップ・コンテンダーになっていた。夏休みもバスケに没頭。アディダス社が主催したサマーキャンプでは朝9時前にコートに来て、夜9時までそこを去って行かなかった。技術もさることながら、その熱意に対して多くの指導者たちが一目を置いていた。
急激に強くなったACESは1994~95年シーズンが始まる前から州だけでなく、全米の注目を集めるようになっていた。高校3年生になったコービーはチームの最長身選手だったが、ダウナー監督はチーム全体の戦力もきちんと強化していた。
当時のメンバーを紹介しておこう。まずガードは最上級生(4年)のエバン・モンスキーとガイ・スチュワート。ここに183センチのダン・パングラジオという有能な1年生のドリブラーが加入し、バックコート陣は充実していた。コービーと同じフォワードにはニューヨークから転校してきた3年生で191センチのジャーメイン・グリフィン。同じ身長で4年生のジェシー・フェダーマンが控えにいたので、ファウル・トラブルにも対応できた。センターは4年生で193センチのクリス・ローソン。ビッグマンこそいなかったが、学年的なバランスとサイズは、高校生のチームとしてはなかなかのものだった。
ダウナー監督はこのシーズン、“コービー・ルール”を設けている。高校チームとは言え、日本同様、やはりそれは教育の一環でもある。すでに大人と同じスキルを持っていたローワー・メリオン高校の背番号33は、このときバスケだけでなく生きていく上で大事なものを学んだ。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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