内村 復活のV10!「素直に嬉しい」痛む両手でガッツポーズ

[ 2018年5月21日 05:30 ]

体操・NHK杯最終日 ( 2018年5月20日    東京体育館 )

男子個人総合 鉄棒で会心の演技にガッツポーズする内村
Photo By 共同

 キングが鮮やかに復活した。4月の全日本選手権の得点を持ち点として男子個人総合が行われ、全日本3位の内村航平(29=リンガーハット)が合計258・629点とし、逆転で10連覇を達成。両手の痛みに耐えてタイトルを守り、2位の白井健三(21=日体大)とともに世界選手権(10〜11月、カタール・ドーハ)の代表に決まった。

 着地を止める。観衆が沸く。ガッツポーズで応える。大逆転で金メダルを獲得した16年リオデジャネイロ五輪の再現だ。3位で迎えた最終種目の鉄棒。完璧な内容で終えた内村は思った。「いい演技ができて、自分は幸せもの」。続く白井の得点は及ばず、谷川翔が落下し逆転戴冠。かつて勝ち続ける苦しさを「地獄」と表現したが、NHK杯10連覇には「素直にうれしい。全日本で負けたから、こういう感情が生まれた」と歓喜に浸った。

 全日本は3位で連覇が10でストップ。谷川翔と0・832点差、白井と0・500点差で勝負の6種目に臨んだ。意識してきたのは着地。1種目目の床運動、ラストの3回ひねりで着地をピタリと止めた。全日本予選で落下したあん馬では、器具に近い観客席の最前列で見守った千穂夫人、長女の斗碧(とあ)ちゃん、次女の千翠(ちあ)ちゃんに好演技を披露。他の種目でも安定感は抜群で、この日の86・965点は白井に1・234点差をつけ、全体トップのハイスコアだった。

 昨年の世界選手権で痛めた左足首は完治したが、両手に不安を抱えていた。3月、復帰戦のW杯を前に右手の中指と薬指を突き指。全日本の予選1種目目の鉄棒で、再び中指を痛めた。「ブチって音がした」。患部は紫を通り越してドス黒く変色。何とか全日本の決勝はまとめたが、今大会に向けた調整で左手の薬指も痛めた。逆境でも集中は切らさず、6種目を完遂。鉄棒の演技後、両拳を握ったガッツポーズの瞬間だけ、痛みは消えた。

 世代交代を許さない美しい復活劇で、リベンジを期す世界選手権の代表にも決定。「“I was king”ですからね、僕は。“am”ではない。1回負けているんで“was”です」と笑うが、老いた過去の王者とは誰も思っていない。団体総合連覇、個人総合のV奪回へ。体操界の中心には、今もキング・内村がいる。

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2018年5月21日のニュース