現行の採点方法を凌駕した羽生の“支配力” 岡崎真氏が分析

[ 2015年12月14日 08:57 ]

演技終盤にハイドロブレーディングを見せる羽生

フィギュアスケートGPファイナル最終日

(12月12日 スペイン・バルセロナ)
 再び最高得点を塗り替えた羽生のフリーだが個々の要素の出来は、気迫に満ちていた前戦のNHK杯の方が輝いていたように思う。今回の凄さは、この得点を出すプログラムを完全に自分のものにした、という「支配感」とでも言うべきものか。最後のスピンはNHK杯時には回転スピードが不足していたが、この日はさほど気にならなかった。これは、これだけのプログラムを完遂しながら、まだ余力があったことを証明していると感じた。呼吸や間合い、いろいろなものがパッケージとして完成の域に到達した印象だ。

 実は序盤のジャンプ一つ一つを精査すれば、完璧ではなかった。空中での回転軸は少しずれていたが、されど、何もなかったかのように着氷した。羽生ならより質の高いジャンプが跳べるはずだが、得点的に見れば4回転2発はGOE(出来栄え評価)による加点がプラス限界の「3」。つまり、これ以上の得点は見込めない。となれば、羽生のポテンシャルは現行の採点方法を凌駕(りょうが)してしまった、と言うことができるかもしれない。

 もし、前半ジャンプで転倒した際にどう立て直すか、というのが唯一の不確定要素。だが、前述のように多少の軸のずれもカバーできるボディーバランスの確かさも持ち合わせており、大きく崩れることは考えにくい。追う選手との差は大きく、当面は自分との戦いとなるだろう。(ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

続きを表示

2015年12月14日のニュース