コービーとガーネット 考えさせられる“偉大な選手”の引き際

[ 2015年12月14日 08:30 ]

レイカーズのコービー・ブライアント(AP)

 NBAティンバーウルブスのフォワード、ケビン・ガーネット(39)は21シーズン目となった今季も先発で出場している。ただし平均出場時間は全体の3分の1となる16分。04年にシーズンMVP、セルティクスに在籍した08年にはファイナル制覇に貢献しただけに、少々物足りない“労働時間”かもしれない。

 今季の平均得点(3・2)は自己最少。試合の土壇場ではベンチで応援する立場に回っている。それでいて彼が現役でいられるのは、チーム上層部から求められている「MENTOR(助言者)」としての役割を自覚しているから。若手の多いティンバーウルブスにあって、ガーネットの経験は出場時間や得点よりも価値があるものと判断されているのだ。

 一方、20シーズン目を迎えたレイカーズのコービー・ブライアント(37)は11月29日に今季限りでの引退を正式に発表した。ファイナルを5回制覇してそのうち2回はMVP。得点王にも2度輝き、通算得点は歴代3位にランクされている。

 「彼は僕らの時代のジョーダンだった」。多くの現役選手が80年代から90年代に全盛時を迎えたマイケル・ジョーダン(元ブルズほか)にその姿をオーバーラップさせている。少年時代の憧れであり、目標だったのがブライアントだった。

 ただしブライアントの立ち位置はガーネットとはまったく違っている。先発で出場するところは同じだが、依然として“指定席”はチームの中心に取り付けられている。不振のレイカーズの中にあって平均得点(16・2)はトップだし、出場時間は31分。リーグ最高年俸の2500万ドル(約30億円)を稼ぐドル箱スターとしては、コート上にいることで存在感を示さなくてはいけないのだろう。

 しかしフィールドゴールの成功率は自身ワーストの32・4%。20代の時に見せていた土壇場での粘り強さは消え失せているし、バランスを崩しながら放つジャンプ・シュートも多くなった。打っても打ってもシュートが入らない日もある。見ていてもつらいのはファンも私も同じだ。

 もしブライアントがガーネットのような役どころを受け入れられるのなら、あと数年は現役でいられたと思う。真ん中ではなく“末席”で若手にアドバイスするような仕事であっても誰も文句は言わないはず。ただ彼のプライドがそれを許さないのだろう。

 高校生のガードがドラフトで指名されたのはブライアントが初めて。彼がNBAで活躍したからこそ後に続いた選手たちがいる。今季の残り試合はあと58。偉大なスター選手の引き際の難しさを考えながら今、レイカーズの背番号24を追い続けている。(高柳 昌弥)

続きを表示

この記事のフォト

2015年12月14日のニュース