辻仁成氏 芦原妃名子さん急死、局側対応に「違和感と憤り」 自身の経験重ね「テレビ局は説明する必要が」

[ 2024年2月3日 17:07 ]

辻仁成氏
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 フランス在住の作家でミュージシャン・辻仁成氏(64)が3日までに自身のブログを更新。昨年日本テレビで放送された連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんの急死をめぐり、原作者の立場について言及した。

 芦原さんの急死が報じられた先月29日、日本テレビは追悼コメントを発表。「小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただいた脚本を決定原稿として放送」と放送までの経緯を説明。「本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております」と悼んだ。

 辻氏は「某月某日、『セクシー田中さん』という漫画の原作者である芦原妃名子さんが自死をとげたという壮絶なニュースを、さきほど知り、衝撃を覚えている」と書き出した。

 「彼女が描いた漫画のドラマ化の段階で、テレビ局側とトラブルがあったようだが、そのテレビ局によるニュースをネットで確認したが、『感謝しております』という表現に違和感と憤りを覚えてならなかった」と局側の対応に苦言を呈した。

 自身も、韓国ドラマの原作を担当した際、シチュエーションは違えど原作者の自身をないがしろにされるような経験をしたという。その時は、辻氏の猛抗議を聞いた監督から長い謝罪の手紙が送られてきて、対面して会話。内情も理解した上で「ぼくは最終的に『監督の思うように撮影をしてください』ということを伝え、彼らも原作にできるだけ沿う形でドラマ化することを誓ったのだった」と和解した。

 一方、かつて全脚本を手掛けた菅野美穂主演のドラマ「愛をください」についても回想。「小説も存在するが、ドラマと小説では速度が違いすぎて、小説の原案をそのままドラマにすることは不可能なのだった」と葛藤していた心境を吐露。

 「しかし、芦原さんがテレビ局と結んだ契約は、『原作に忠実に再現する』ということが盛り込まれていたというし、他にも、相談できる関係者はいたはず。芦原さんが、約束が違うと悩み、ご自身で最後の方の脚本を書かれたようだが、いろいろとしこりが残ったのだろう、傷つき、そこに信頼を託せる人間が介在していなかった、ということが一つの要因となり、ごめんなさい、というような原作者なのに謝罪しなければならない辛い立場においやられ、お亡くなりになるという最悪の事態になってしまった」と慮った。

 「誰が悪いというのは、部外者のぼくにはわかるはずもないが、少なくとも、原作者の、原作、という言葉の重みを思い出してもらいたい。そこに読者がいて、そこにもともとの原案、つまり、作者の意思があって、生まれた作品の根っこなのである。それなのにテレビ局は、他人事のようにニュースで『感謝しております』、は違うのじゃないか、と思うのはぼくだけだろうか。人がこの問題で苦しみ、亡くなられて、感謝、という言葉は、おかしい。双方にどのような行き違いがあったのか、わからないが、死は残酷すぎる」と指摘。

 日本テレビは芦原さんの死を「重く受け止めている」とし、「日本テレビの責任において制作および放送」「関係者個人へのSNS等での誹謗(ひぼう)中傷などはやめて」と呼びかけた。

 これについても「テレビ局や脚本家さんや制作サイドや出版社を攻撃するな、という人がいるが、攻撃ではないし、第二、第三の不幸が訪れる前に、このような体質を改めるべきではないか、と思うのだけれど。原作者に誰が寄り添うことができるのか、と自分のことではないが、悲しすぎて、ため息がこぼれる。なぜ、芦原さんが死ななければならなかったのか、テレビ局は第三者の究明委員会を結成し、視聴者や芦原さんの家族やファンに対して、また、ドラマのスポンサーをやった企業に対して、説明する必要があるのじゃないか。彼女の痛みは、彼女の作品が好きだった人だけじゃなく、コツコツと作品を創作してきたあらゆる表現者に通じる苦悩なのだ」と言及した。

 フランスでも原作を出版社に改変され、結果的に心を患った経験があるという辻氏は、「芦原さんが抱えたであろう苦しみがぼくには、なんとなく、よくわかる。彼女と仕事をしてきた人たちは、彼女の心にもう少し、少し、寄り添えなかったのだろうか? 権力の前で苦しむ原作者の声なき声が、心を軋ませる。あの日の自分と重なり、言葉が強くなってしまったが、ものをゼロから生み出す者は、人に言えないほど苦しい思いをし、作品を自らの血の中からひねり出している。そして、その作品は子供のような存在なのだ」と自身の経験と重ね、憤りを隠せなかった様子。

 「この悲しい出来事が繰り返されないよう、愛を持って、作品を作ってほしい」と訴えた。

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