財津一郎さん 極貧生活の悔しさつらさ… 独特セリフは“心の叫び”だった

[ 2023年10月20日 05:05 ]

財津一郎さん
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 コメディアンとして独特の存在感を放った財津さん。喜劇だけでなく、中井貴一と海軍軍人の父子を演じた映画「連合艦隊」(1981年)など重厚な演技でも知られた。ドラマ「3年B組金八先生」には79年の第1シリーズから出演。金八の良き理解者のおおらかな英語教師役で視聴者にも人気だった。

 熊本県生まれ。11歳の時に終戦を迎え、農林省の役人だった父はシベリアに抑留。長く極貧生活を送った。

 高校卒業後に早大文学部演劇学科を目指して上京するも、受験に失敗。諦めきれずに早大の授業に忍び込み、帰りに大隈重信の銅像に「ありがとうございました」と頭を下げるような人だった。食事は無頓着なのかこだわりなのか、吉本新喜劇で10日間の劇場出番中、同じものを食べ続けた。楽屋でラーメンを注文し、「腹に入ったら同じ」とあんパンを放り込むなど変わった一面もあった。

 生真面目すぎる性格が意図せぬ笑いにつながることも。「…チョーダイ!」は吉本新喜劇の舞台で生まれた。花紀京さんが演じた息子との親子げんかのシーンで、家を出ていこうとした息子に思わず「やめてチョーダイ!」と叫んだ。当時の財津さんの収入は月1万~2万円。妻子と3人の極貧生活とシーンがどこか重なって飛び出した心の叫びだった。

 頭に浮かんだのはシェークスピアの戯曲「リチャード三世」。「リチャード三世は死ぬ直前“神よ助けたまえ”と叫んだ。私も“私を、家族を、助けたまえ”と天に向かって叫ぶ心境だった」という。心からの叫びが観客に大笑いされたのがショックだった。「キビシーッ!」も同様で「親子3人が食べるのに困っていた時代。悔しさとつらさが“キビシーッ!”だった」と振り返っていた。


 ≪あたり前田のクラッカー! 流行語生んだ出世作「てなもんや三度笠」≫ 財津さんの出世作「てなもんや三度笠」は、1962年から1968年に放送された時代劇風コメディー番組。主演の藤田まことさんをはじめ、白木みのるさん、香山武彦さん(全て故人)らとともに公開放送形式の生本番で撮影に臨んだ。番組スポンサーだった企業の製品にちなんだ「あたり前田のクラッカー!」などの流行語を生み出し大ヒット。全309回放送し平均視聴率は、関東地区26.6% 関西地区で37.5%で、関西での最高視聴率は64.8%を記録した。

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