「麒麟がくる」今夜注目の初回“大河復権”なるか 落合CPが明かすタイトルに込めた意味と大河の存在意義

[ 2020年1月19日 05:31 ]

大河ドラマ「麒麟がくる」の主演を務める長谷川博己(C)NHK
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 俳優の長谷川博己(42)が主演を務めるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜後8・00)は19日にスタート。第29作「太平記」(1991年)を手掛けた名手・池端俊策氏(74)のオリジナル脚本で、智将・明智光秀を大河ドラマ初の主役に据え、その謎めいた半生にスポットを照らす。昨年の「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」は期間平均(全47話)視聴率8・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大河ドラマ史上初の1桁、歴代ワーストを更新した。3年ぶりとなる人気の戦国時代を舞台とし「大河新時代」と銘打つ「麒麟がくる」。“大河復権”となるか、その船出に注目が集まっている。

 大河ドラマ59作目。物語は1540年代、まだ多くの英傑たちが“英傑以前”だった時代から始まり、それぞれの誕生を丹念に描く。若き明智光秀(長谷川)織田信長(染谷将太)斎藤道三(本木雅弘)今川義元(片岡愛之助)、そして豊臣秀吉(佐々木蔵之介)徳川家康(風間俊介)が所狭しと駆け巡る――。戦国初期の群雄割拠の戦乱の中、各地の英傑たちが天下を狙い、命を懸け、愛を懸けて戦う戦国時代のビギニングにして「一大叙事詩」となる。

 主人公・光秀の主君・斎藤道三の娘で、のちの織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)を演じる予定だった沢尻エリカ被告(33)が昨年11月16日に麻薬取締法違反罪で逮捕。NHKは11月21日に川口春奈(24)の代役決定を発表した。11月26日には当初の1月5日から初回放送日を2週間延期すると正式発表。12月3日に川口の本格的な撮影をスタートし、序盤を撮り直した。

 例年12月中に行われる初回試写会は放送開始3日前の1月16日に開催。注目度も高く、試写室には約20席の補助席が出るなど大盛況となった。

 第1話は「光秀、西へ」。領地を荒らす野盗を撃退した際、明智光秀(長谷川)は、その頭領が持っていた「鉄砲」という見たことのない武器に興味を持つ。美濃守護代・斎藤氏の名跡を継ぐ斎藤道三(本木)に掛け合い、ある約束と引き換えに、鉄砲がどういうものか探る旅に出る。堺を訪れると、ひょんなことから三好長慶の家臣・松永久秀(吉田鋼太郎)に気に入られる。次に向かった京で、名医と名高い望月東庵(堺正章)と助手の娘・駒(門脇麦)に出会うが、東庵は大の博打好き。本当に名医なのかヤブ医者なのか分からない。そんな中、大名同士の抗争が始まり、町は大火事になる…。

 冒頭、光秀たちと領地を荒らしに来る野盗との攻防はスペクタクルに展開。岩手ロケを行い、ドローンやGoPro(ヘルメットカメラ)を使うなど視点も豊か。段々畑を縦横無尽に駆け巡る長谷川はアクション俳優のよう。突き抜ける青空、見晴らしのいい段々畑の緑、色鮮やかな衣装が映え、4K撮影による映像美は息をのむ。

 チーフ演出の大原拓監督は「脚本の池端さんとも話をしたんですが、光秀は武の部分があまり描かれていない。光秀は戦ってきた人なので、しっかり戦いたいなと。それが今回の光秀というキャラクター像の最初の在り方。自分たちの領地を守るという思いを戦いに乗っけたいと思いました。そして、何と言っても長谷川さんに躍動していただきたかった。広大な段々畑を休まず駆けてください、一瞬死んでしまうんじゃないかと思うぐらい無茶なオーダーをしましたが、やり遂げていただいたので、迫力のあるキャラクター像につながったと思います」と狙いを説明。

 長谷川も「完成した映像は切り返し(カット割り)がありますが、実際は一連で撮影しました。僕は人を斬る時、息を止めるんです。なので、斬った後に走っていると、本当に酸欠状態になって倒れそうでした。きつかったですが、ちゃんと映像に残ったので、よかったと思っています」と手応えを示した。

 報道陣からも好評の声が相次いだ。初回は拡大版75分。大河ドラマの初回75分は2013年「八重の桜」以来7年ぶり。過去6年は60分だったため、今回、戦国ファンは一層たっぷり楽しめる。

 「いだてん」の全話平均視聴率8・2%は12年「平清盛」と15年「花燃ゆ」の12・0%を大幅3・8ポイント下回り、大河ドラマ歴代ワーストを更新。コカイン使用によるピエール瀧(52)の逮捕・降板などもあり“大河ブランド”は大きく傷ついた。「麒麟がくる」初回19日は裏番組に「ラグビーW杯」や「M―1グランプリ」のような強力コンテンツはなく、いわゆる“平場”。「麒麟がくる」にとっては好環境と言える。

 ▼日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」(後7・58~8・54)=あさこミステリーツアー&イモトワールドツアー

 ▼テレビ朝日「ポツンと一軒家」(後7・58~8・56)=島根県で発見!地元で千年続く風習とは!?

 ▼TBS「坂上&指原のつぶれない店SP」(後6・30~9・00)

 ▼テレビ東京「凄技★クラフトマン~驚き材料で衝撃過ぎるぶっとび傑作77連発SP~」(後7・54~9・54)

 ▼フジテレビ「日曜THEリアル!トラブルSOS サギ師vs最強弁護士 怒りの逆襲SP」(後8・00~9・54)

 最大のライバルは「ポツンと一軒家」。見事なまでに奪われたメインターゲット、F4層(女性65歳以上)とM4層(男性65歳以上)を再び呼び込めるか。「いだてん」の初回(1月6日)と最終回(12月15日)を比べると、F4層とM4層は実に半減してしまった。

 また、19日はTBSの看板枠・日曜劇場「テセウスの船」(日曜後9・00)が初回。75分「麒麟がくる」と「テセウスの船」、日本テレビ「行列のできる法律相談所」、テレビ朝日「おかしな刑事 京都スペシャル」は午後9時から15分重なる。これが、どのような影響を及ぼすのか。

 タイトルにある「麒麟」とは中国神話の伝説上の霊獣で、王が仁のある政治を行う時に必ず現れるという聖なる獣。光秀が主人公に決まり「麒麟の概念は戦国時代にあったんですが、『麒麟がおもしろいんだ』と、この作品に持ち込んだのは脚本の池端さん。僕らも度肝を抜かれました」と制作統括の落合将チーフプロデューサー(CP)。タイトルに込めた“熱い思い”を明かした。

 「我々としては『誰々という人がいました。その人が革命的なことをしたので、今の日本が出来上がりました』みたいなドラマにはしたくなかったんです。『その時代に、どういう人間たちがうごめいていたのか』という大きな群像劇を作りたい。群像劇のタイトルに個人名は入るのは、おかしいんですよね。池端さんもおっしゃっていましたが、麒麟を求める人たちの話にするといい、その中心に明智光秀がいるということで『麒麟がくる』というタイトルに落ち着きました。ここからは僕の個人的な思いになりますが、池端さんは鎌倉時代の末期から南北朝時代の動乱期を舞台にした『太平記』もそうでしたが、時代の転換期を描きたい方。平成から令和に移り変わった今も大きな時代の転換期。戦国時代と今の時代、生きやすい世の中じゃないということは一致している、未来が見えないということは共通していると思います。そういう意味で、今の閉塞した世の中にも麒麟がきてほしいと感じる視聴者の皆さんに、時代の転換期を描くこのドラマは届くんじゃないか。届いてほしいと思っています。日本がどういうふうに出来上がってきたのかという歴史、そして今の日本がどういう時代にあるのかという座標みたいなものを、エンターテインメントとして描くことに大河ドラマの存在意義はあると思います。特に、今のような揺れ動く時代には。それには、非常にしっかりした脚本が必要。今回、池端さんにはそれに応えていただいています」

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