高倉健さん養女・小田貴月さん「相手の周波数に心を合わせることで、一緒にハーモニーを奏でる」
高倉健さん養女・小田貴月さんインタビュー
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【小田さんと一問一答<1>】
──17年間、2人きりで外で食事したことが一度もない。相当の覚悟がなければ出来ないことだと。
小田さん そうですね。(マスコミの目もあって)どこどこに誰と食事に行ったということを、翌日には関係者が知っているということが続いたと聞きました。(周りの人に)見られているのが分かってドキドキしながら、食事に時間をかける神経を持ち合わせておりません。食事はリラックスして、味わうものじゃないでしょうか。ですので、高倉からその話を聞いてすぐに、料理は自分で作った方がいいなと思うようになりました。
──料理は得意?
小田さん (父方の)祖母から、「時間をかける」「手塩にかけて作る」「塩梅(あんばい)は大事にしなさい」と聞かされて育ちました。自分が作ったものを喜んで食べてくださる方がいるうれしさ。残さず食べてくれました。
──メニュー作りは大変だったでしょう。
小田さん お肉がいいんです。鳥、鴨、牛、豚、時にはラム。私としては出来るだけバリエーション豊富に作ることを心掛けました。食事は命を養うものですから、毎日の献立は丁寧に考えました。体重チェックは毎日欠かしたことがありません。(私の作る料理は)お腹いっぱいちゃんと食べても太らないということを伝えたかった。私自身のチャレンジでもありますから楽しかったです。
──高倉さんとの関係を“伴奏者”と表現しているが?
小田さん 「ばんそう」の「そう」は「走」じゃないんですか?と校正の人に何度も言われましたが、高倉の話をいろいろと聞いた上で、私がベストと思ったのが、“奏でる”の「奏」の方。「走」じゃないんです。
──タイトルの「その愛。」に込めた思いは?
小田さん この本を包んでいるのは「愛」です。私が思う「愛」は、常に相手の周波数に合わせられる力、言い換えれば魂の共鳴だと思っています。人間はみなそれぞれ異なった周波数を持っています。日によっても時間によっても揺れ動きます。相手の周波数に心を合わせることで、一緒にハーモニーを奏でる。つまり“伴奏”なんです。高倉はマザー・テレサの「愛の反対は無関心」という言葉も多用していたことで、タイトルのヒントになりました。
──1人の時間はどう使っていた?
小田さん 制約とかは何もありませんでしたが、高倉が海外に出ている時の方が私、忙しいんです。モーニングコールから始まり、その国と日本、2つの時間を過ごすので、一度5秒くらい遅れてしまい、「なんのためにモーニングコールを頼んでると思う?」と声のトーンを低くされたことがあります。それ以降、正座です。タイミングを損なわないように(笑)。それと、高倉は留守番電話が嫌いでした。いつ家の電話に「◯◯を送って欲しい」というのが来るかも分からないので、買い物で外出する時間帯にも現地時間での仕事の様子を想像する力が必要でした。軍隊の上官命令は絶対でしょう?(笑)
──それは大変!
小田さん 門限午後5時です(笑)。仕事がない時には、その時間帯に帰ってくるので、必ず玄関で出迎えます。必ずです。今まで、高倉が感じたことの亡い、家でリラックスした時間を整えたいという、チャレンジングな人生を十分に楽しみました。
──映画俳優としての高倉さんをどう見てましたか?
小田さん 最後まで現役としてのあり方にこだわりました。「俳優には定年がないから、自分で恥をわかってないとね」と。体力はもちろん、セリフが覚えられなくなったら主演(俳優)は務まりません。だから、常に体も頭も鍛え、いわゆる滑舌のトレーニングも続けていました。
──すさまじい。
小田さん 高倉にとっては、それが当たり前でした。映画俳優として主役を張るという重圧は私には推し量ることができません。作品に入る前、必ずシャックリが出て止まらなくなるのも、自分にプレッシャーをかけていたからだと思います。
──健さんから「こんな役をやりたい」と聞いたことは?
小田さん 「無法松の一生」をやりたがっていました。それと、着ぐるみの役もやりたがっていたんですよ。「フレンチ・コネクション」(71年公開の米映画)でジーン・ハックマンがサンタクロースのかっこうをしていましたが、それを何度も見て、「僕は熊でもいい」と話していました。今までやったことのない役に挑戦したい。そのための引き出しを増やす努力は惜しみませんでした。
──亡くなって5年、喪失感は?
小田さん それはやっぱり消えません。でも、声は聞こえませんし、触れることもかないませんが、時々、やってきているような気がします。9月も部屋のバランスボールが揺れました。
──きっと見守ってくれているんですね。
小田さん 寂しいと思う時はありますが、例えば、「この本を書いてね」と言われたのも、これは私の勝手な解釈ですが、「寂しがらないで」「負けるな」と、とてつもなく難しい宿題を残してくれたのだと思っています。ですから本作りに関わった時間はとても幸せでした。
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