田口トモロヲ 多才な61歳、百面相で追い求めるグッとくる表現

[ 2019年9月15日 10:00 ]

61歳になった今も多彩な才能で活躍中。穏やかな微笑を見せる田口トモロヲ(撮影・島崎忠彦)
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 【俺の顔】俳優の田口トモロヲ(61)は「ルックスも含め凄く平均的な人間」だと自認する。半面、演じる役はジャンルを問わず硬軟、変幻自在で性格俳優の力量をいかんなく発揮。映画監督、ミュージシャン、ナレーターなど多才ぶりでも知られる。今も常に悩みが付きまとっているというが、学生時代に薫陶を受けたアングラ演劇とパンクロックを糧に、理想とする「グッとくる表現」を追い求め続けている。

 ◇公開30周年「鉄男」

 田口が金属に侵食されていく男を演じた初主演映画で、世界的にもカルト的な人気を誇る塚本晋也監督(59)の「鉄男」が今年、公開から30周年を迎えた。5月に東京・立川シネマシティで行われた記念上映会は満員札止めの盛況。記念Tシャツや塚本監督の著書の即売会には観客のほぼ全員が並んだ。

 「サイン会が終わらないのではと思うくらいでした。当時は皆無名で、何者でもなかった人たちが30年たって再会できた。それを意識して作ったわけでもないので、逆に感慨深いですね。30年前の自分たちに“鉄男”は生き残ったぞと、言ってやりたいです」

 塚本監督が田口を見いだしたのがアングラ演劇。高校時代に唐十郎率いる「状況劇場」を見て心臓をわしづかみにされ、大学では芝居に没入した。同時にセックス・ピストルズに始まるパンクのムーブメントにも多大な影響を受けた。

 「その頃はさまざまなカルチャーが混然一体となって芽生えた時期だったので、そこにシンクロして身を置きたいと思うようになったんです。アングラも最初に参加したのは裏方で、役者が足りないから出るようになった。アングラの重鎮たちを見ているだけで幸せだったし、洗礼を受けました。そこにパンクが日本に入ってきて、僕の中でアングラとパンクの価値観が合致したことで、今こうなっちゃっています」

 自嘲気味に笑うが、当時は食えなくても、挫折を繰り返しても決してつらいと思ったことはなかったという。1980年代にタモリ(74)が司会の日本テレビ「今夜は最高!」のレギュラーに抜てきされ俳優をなりわいとして意識したものの、90年代は塚本をはじめ廣木隆一、三池崇史、SABUら気鋭の監督たちに請われ映画に傾倒していく。

 「根が暗い人間なので、テレビの元気で明るい世界観についていけなくて悩んでいる時に映画と出合ったんです。死体役でもいいから、映画の現場に行きたいという感じ。演技だけをしていれば良くて、凄く自然でいられた。のめり込むことで自分が違う人間なりたい、凄く平均的な人間なので表現によって非日常を生きたいという願望の表れですね」

 ◇喪失感…盟友・大杉さんの死

 その頃に出会った大杉漣さん(享年66)、光石研(57)、遠藤憲一(58)、松重豊(56)のいわゆる「バイプレイヤーズ」の面々は「同時代を目撃してサバイブしてきた同志」と評するほど絆が深い。特に昨年2月に急逝した大杉さんとは、ユニット「ハージー・カイテルズ」を組んでライブ活動を行うなど昵懇(じっこん)だっただけに、いまだに喪失感は大きい。

 「ハージー・カイテルズをつくってから10年くらい仕事の場所が合わなかったけれど、『バイプレイヤーズ』で深く再会して2人とも肩の力が抜けてこれから何か生み出せるかなと感じていた矢先だったので、本当にどうなるか分からない、一寸先は闇だと感じました。改めて、好きなことだけやっていたいと思いました」

 2000年スタートのNHK「プロジェクトX~挑戦者たち~」のナレーションでさらに注目を浴び、03年「アイデン&ティティ」で映画監督に挑戦と、表現の多様化にも積極的だが悩みは尽きない。それでも好きなことにまい進しているからこそ、立ち止まることは考えていない。

 「役と距離感を持てるようにはなりましたけれど、演技にはゴールがないので今でも新しいお仕事を頂くたびに悩んでいます。映画、テレビ、舞台で全然違うし、演出家が100人いれば100通りの価値観がある。この世界、うまい方はいくらでもいますからね。僕が目指しているのはうまい下手ではなくて、明確ではないものが演技で表現できる、大げさに言えばグッとくる表現ができればいいなと思っているんです」

 表現の究極を目指す飽くなき求道者としての一面をのぞかせた。ところで「バイプレイヤーズ」では最年長となった。大杉さんからリーダーの座を引き継ぐのだろうか。

 「それはまずい。年長者として松重に“おまえがリーダーだ”と命令します。彼が一番しっかりしているので」

 そこは謙虚さを見せつつも、しっかりと強権発動していた。

 《定年間近の刑事好演、20日公開「見えない目撃者」》田口は今月20日公開の映画「見えない目撃者」に出演。定年間近の刑事役で「窓際なので、本当に地味で平凡で目立たないことを意識しました」というが、吉岡里帆(26)演じる盲目のヒロイン・なつめの証言を頼りに、連続猟奇殺人の謎に迫っていく。主演の吉岡については「物語と真摯(しんし)に向き合って、現場でもスタッフや全体に対して目配りのある方で素晴らしい。仕上がりも見事でした」と称えた。

 ◆田口トモロヲ(たぐち・ともろを)1957年(昭32)11月30日生まれ、東京都出身の61歳。78年に劇団「発見の会」に参加して以降、小劇場などでの出演を重ね、89年の初主演映画「鉄男」で注目される。97年「うなぎ」「鉄塔武蔵野線」などで毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。03年「アイデン&ティティ」で映画初監督。テレビ朝日「ドクターX」シリーズのナレーションでも知られる。

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