「なつぞら」中川大志“面倒くさい”坂場役の反響「怖い」も好感度上昇!大役に重圧も「真田丸」経験を糧に

[ 2019年8月28日 10:00 ]

中川大志インタビュー

連続テレビ小説「なつぞら」でヒロイン・なつ(広瀬すず)を支える夫・坂場を好演し、エプロン姿も甲斐甲斐しい中川大志(C)NHK
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 俳優の中川大志(21)がNHK連続テレビ小説「なつぞら」(月~土曜前8・00)にレギュラー出演。主人公・奥原なつ(広瀬すず)と結婚した“イッキュウさん”こと若手演出家・坂場一久役に奮闘している。理詰めで第一印象“最悪”のキャラクターに、反響は「ずっと怖いです」と率直な心境。それでも、結婚後は“主夫”として献身的に働く妻を支える姿に視聴者も好感。“難役”に「迷って探って、時間がかかりました」と苦闘した。ヒロインの夫という“大役”にプレッシャーを感じながらも、2016年の大河ドラマ「真田丸」の経験も生かし「朝ドラならではの長いスパンを使って、こんなにも印象を変えていける役は凄くやり甲斐があります」と果敢に挑んでいる。

 節目の朝ドラ通算100作目。大河ドラマ「風林火山」や「64」「精霊の守り人」「フランケンシュタインの恋」、映画「39 刑法第三十九条」「風が強く吹いている」などで知られる脚本家の大森寿美男氏(52)が03年後期「てるてる家族」以来となる朝ドラ2作目を手掛けるオリジナル作品。戦争で両親を亡くし、北海道・十勝の酪農家に引き取られた少女・奥原なつ(広瀬)が、高校卒業後に上京してアニメーターとして瑞々しい感性を発揮していく姿を描く。

 中川の朝ドラ出演は、小学6年生の時の11年前期「おひさま」以来8年ぶり2作目。「当時は芝居を始めたばかりで、まだ子どもだったので、朝ドラに出演することがどういうことか全く分かっていませんでした。その後、いろいろな仕事をさせていただいて、またいつか戻りたい場所だったので、節目の作品に参加できるだけで、うれしかったです。しかも、まさかヒロインの旦那さんになる役を頂けるとは思っていなかったので、最初のうちはずっとプレッシャーを感じていました」

 今回演じる坂場は絵は描けないが、アニメの知識は人一倍多い。企画力に優れ、思いもよらないストーリーを考えつく。一方、理屈っぽく、アニメーターたちに無理難題な描き直しを求めるなど、周囲も手を焼き、なつも最初は苦手意識を感じていた。

 それも、要領の悪さゆえ。なつとの結婚も、プロポーズ→短編漫画映画「ヘンゼルとグレーテル」の興行的失敗の責任を取り、東洋動画を退職→プロポーズ返上→なつから「考えてみれば、一度だって、あなたに好きだと言われたことはなかったもんね」「私は、あなたの才能を好きになったわけじゃありません。あなたの言葉を、生きる力を好きになったんです。好きじゃないことを、才能のせいにしないでください。そんな人とは一緒にいたくない。さよなら」→再プロポーズと紆余曲折した。

 中川自身も、役への第一印象は「コイツ、面倒くさい」と苦笑い。なつをはじめ、東洋動画のメンバーとも折り合いが悪く「『何なんだ、コイツ』という“異物感”。それが、どう夫婦になるのか、最初は全く想像がつきませんでした」。重要なシーンと振り返るのが「アニメーションにしかできない表現」の問答をめぐる帰結、第78話(6月29日)。坂場の答えは「あり得ないことも、本当のように描くことです。違う言い方をするならば、あり得ないことのように見せて、本当を描くことです」だった。

 「アニメーションにしかできない表現は何か。なつに出会った当初、坂場は『それは、やはり、あなたが自分で考えてください』と言います(第73話、6月24日)。なつは漫画映画『わんぱく牛若丸』で馬の前脚を4本描きましたが、それがなつの答え。この時、なつは魂をぶつけるような感覚的な部分があって、それを坂場が言語化して導くような、2人の関係性が見えたんです。坂場にはないエネルギーや発想力がなつにはあって、なつには説明不可能なことも坂場には言い表すことができる。お互い、ないものを持っているからこそ、2人だからこそ1人じゃたどり着けない場所に行けるような存在になるのかなと思いました」

 2人が結婚してからは、坂場が家事や育児と担当し、なつを支えている。甲斐甲斐しいエプロン姿や愛妻家ぶり、子煩悩ぶりに、視聴者の評価もうなぎ上り。「こんな最悪の第一印象のヤツを、ちょっとずつでも視聴者の皆さんに好きになっていただけるのか。正直いろいろ迷って探って、時間がかかりました」と苦労を吐露しながらも「ただ、急にキャラクターが変わったんじゃなく、だんだんと坂場のことを知っていただける台本の構造になっていたので。朝ドラならではの長いスパンを使って、こんなにもキャラクターの印象を変えていける役は凄くやり甲斐があります」と手応えを感じた。

 「坂場が視聴者の皆さんにどういう受け取られ方をするのか、ずっと怖いです。この半年間、視聴者の皆さんはヒロインを通して作品に感情移入していくものなので『なつが、この人と結婚して良かったね』と思っていただけるところまでキャラクターを成長させないといけない。娘が生まれて父親になった坂場をご覧いただいて『人って、変われば変わるもんなんだ』と感じていただけたら、終盤はおもしろいと思います」

 また、カレーパンの具をこぼしたり、バレーボールが下手だったりの不器用な設定については「坂場の人間味のある部分は出していきたかったので、少し滑稽に見えたらいいと思いました。ただ、カレーパンの具をこぼすのも、自然に見えるにはどうしたらいいか。まず具の固さがあって、パンのどこをどうかじれば、どのタイミングでこぼれるか、相当な計算がされています。だから、僕自身が不器用だったら、一発勝負のあのシーンはできないと思います」と笑った。

 最終回視聴率40・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した11年10月期の日本テレビ「家政婦のミタ」で主人公・三田灯(松嶋菜々子)が派遣される阿須田家の長男・翔役を演じて脚光。16年のNHK大河ドラマ「真田丸」は徳川家康(内野聖陽)に立ち向かう若武者・豊臣秀頼を鮮烈に溌剌と演じた。

 「真田丸」のチーフ演出を務めた木村隆文氏が「なつぞら」のチーフ演出。「真田丸」の多くのスタッフが「なつぞら」に携わっている。「真田丸」当時のインタビューで「内野さんは事務所の先輩ですが、家康として見ているので、撮影がすべて終わった後に語り合えたら、うれしいなと思います。撮影が始まる前に『本気でぶつかって来い』とおっしゃっていただいたので、絶対に負けないぞという気持ちがありました」などと語っていた。

 「役者を続けてきた中でも、『真田丸』は凄く大事な作品。今回は『真田丸』の時にお世話になったスタッフさんがたくさんいらっしゃるので、安心感もありますし、少しでも成長した姿を見せないといけないと思いました。『真田丸』を経験したことによって、ちょっとやそっとの現場じゃビビらないという度胸は間違いなくつきました。長回しの空気感でしか生まれない緊張感、そして、その中の一瞬にかける瞬発力。今回も、なつが描いた『わんぱく牛若丸』の馬の動画について、坂場が『動きがおかしくないですか?』と指摘するシーン(第71回、6月21日)も、台本が10ページぐらいあって10分ぐらい長回しをしたんですが、『真田丸』の経験が生きて、その緊張感も楽しんで演じることができました」

 朝ドラヒロインの“相手役”はブレイク俳優を次々に輩出。中川も、さらなる飛躍が大いに期待される。

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