「なつぞら」序盤キーマンは草刈正雄 「真田丸」彷彿 なつとぶつかる頑固者・泰樹「昌幸の生まれ変わり」

[ 2019年4月1日 05:00 ]

連続テレビ小説100作目「なつぞら」序盤のキーマンは草刈正雄(C)NHK
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 女優の広瀬すず(20)がヒロインを務め、節目のNHK連続テレビ小説100作目となる「なつぞら」(月~土曜前8・00)は1日、初回を迎え、半年間の長丁場のスタートを切る。「家族」がテーマになる序盤のキーマンは、俳優の草刈正雄(66)。戦災孤児のヒロインを導く頑固じいさんを演じ、2016年の大河ドラマ「真田丸」を彷彿させる絶大な存在感でドラマを牽引する。制作統括の磯智明チーフプロデューサー(CP)に序盤の見どころを聞いた。

 07年の大河ドラマ「風林火山」などで知られる脚本家の大森寿美男氏(51)が03年後期「てるてる家族」に続く朝ドラ2作目を手掛けるオリジナル作品。戦争で両親を亡くし、北海道・十勝の酪農家・柴田家に引き取られた少女・奥原なつ(広瀬)が、高校卒業後に上京してアニメーターとして瑞々しい感性を発揮していく姿を描く。

 第1週(4月1~6日)は「なつよ、ここが十勝だ」。昭和21年(1946年)初夏、なつ(粟野咲莉)は9歳の時、亡き父の戦友だった柴田剛男(藤木直人)に引き取られて十勝にやってくる。妻・富士子(松嶋菜々子)は我が子としてなつを受け入れようする一方、富士子の父で頑固者の泰樹(草刈)は働き手にもならないと、なつに冷たく当たる。しかし、ここで生きると覚悟を子供ながらに決めたなつは、牛馬の世話や乳搾りを必死に手伝い、次第に泰樹の心を溶かしていく…という展開。

 序盤のテーマは「家族」で、磯CPは「血のつながりのない柴田家に引き取られた戦災孤児のなつが、時にはぶつかり合いながら、どのようにして新しい家族に溶け込み、絆をつくっていくか」と解説。3月6日に行われた第1週の試写会で報道陣の涙を誘ったストーリー展開、ヒロインの子役・粟野咲莉(8)の熱演も注目だが「家族のドラマとしては、なつと泰樹のぶつかり合いに収斂しています」とした。

 草刈が演じる柴田泰樹は明治35年(1902年)、18歳の時に1人で十勝に入植。荒れ地を切り開き、稲作を試すが根付かず、酪農を始める。妻が病死した後、男手ひとつで富士子を育て上げた。偏屈で頑固な性格だが、深い愛を持った大樹のような男。なつに人生を生き抜く術を教え込む。

 なつと泰樹の関係性について、磯CPは「脚本の大森さんは、上辺じゃない人間関係を非常にストレートに描くのが持ち味。孫とおじいさんという関係を飛び越えた1人の人間同士のぶつかり合いとして、なつと泰樹の関係を容赦なく描いてほしいとお願いしました」と説明。牧場で働きたいと言い出したなつを、泰樹が“弟子”と位置付けるのに象徴されている。

 となると、誰が泰樹を演じるかが重要。草刈の起用理由については「泰樹は北海道の開拓民一世なので、自分しか信じていないような男ですが、孤独をまとう反面、心が通い合った時ににじみ出る優しさも本来持っています。泰樹の武骨な存在感とチャーミングな表情の振れ幅を演じられるのは草刈さんしかいないとオファーしました」と明かし、揺るぎない信頼を寄せている。

 その風貌や話し方を見ると、草刈が「真田丸」で演じた真田昌幸が否応なしに連想される。昌幸は主人公・真田信繁(堺雅人)の父で、知略軍略に優れた天才武将。草刈は戦国時代を楽しむかのような豪快な“ラテン系”キャラクターを体現し、ドラマ前半のMVPと称賛された。

 磯CPも大森氏も“大河フリーク”で「真田丸」のファン。97年の大河「毛利元就」で磯CPが助監督を務め、草刈が毛利の家臣・桂広澄を演じた間柄。「二枚目でクールな印象がありましたが、その時、草刈さんを間近で見ていて、実は愛嬌があって、スタッフに対しても非常にフランクに接してくださったりしたんです。そのギャップ感ということで、今回、草刈さんにお願いしましたが、真田昌幸と柴田泰樹の置かれている環境も非常に近い部分がありますし、草刈さんにご出演いただく時点で『真田丸』とのつながりは誰が見ても避けられない。むしろ、それはそれで一緒くたにご覧いただいても構わないんじゃないかと思いました」と打ち明けた。

 さらに「『真田丸』は草刈さんと高畑淳子さん(昌幸の正室・薫役)の芝居も非常に軽妙でおもしろく、草刈さんはシャイな面もありますから、先ほど申した草刈さんの優しさ、かわいらしさ、愛嬌を引き出してくれる女優さんは誰かと考えると、やっぱり高畑さん。お二人が一番いい芝居をしていただけるのあれば、『真田丸』と同じキャスティングになりますが、敢えてこのカップルに、と思いました」。高畑は、柴田家も訪れる帯広の菓子屋「雪月」の店主・雪之助(安田顕)の母・小畑とよを演じる。草刈とのコミカルな会話も「真田丸」再びで楽しい。

 チーフの木村隆文氏をはじめ、田中正氏、渡辺哲也氏と「なつぞら」演出4人中3人が「真田丸」と同じ。草刈自身も1月に行われた北海道・陸別ロケで「泰樹さんは昌幸の生まれ変わりです」と笑いを誘い「ヒゲや衣装、キャラクターも似ていて、また楽しませていただいています」と乗りに乗っている。朝ドラ出演は95年後期「走らんか!」、00年前期「私の青空」以来19年ぶり3回目。節目の100作目を「真田丸」ばりの熱演で引っ張る。

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