「グラゼニ」コージィ氏 ドカベンは“野球史の記録”

[ 2018年6月28日 06:00 ]

コージィ城倉氏
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 「ドカベン」シリーズの魅力を、「グラゼニ」や「プレイボール2」など数多くの野球漫画を手掛ける漫画家・漫画原作者のコージィ城倉氏(原作者名義は森高夕次)は、「実在選手が数多く登場し、現実の球界の時間の流れと同時進行に近い形で描かれた漫画。記録としても読めて感慨深い」と指摘する。

 「プロ野球編」以降のドカベンは、現実の球界の出来事にシンクロするように1年1年描かれた。両リーグの優勝チームが漫画でも優勝し、1998年に西武に入団した松坂大輔(現中日)もすぐに漫画に登場した。「読むと、当時のプロ野球を思い出して懐かしいんですよ」とコージィ氏。これはビッグコミック(小学館)で2014年まで連載された「あぶさん」も同じだという。

 大の野球好きで、球界にも友人の多い水島氏。コージィ氏は「きっと兄貴分のような距離感で選手と接し、生き生きとした姿を作品に描かれてきたのでしょう。水島氏と選手の関係性があったからこそ描けた漫画」と推察する。

 ただ、12年から“最終章”とのうたい文句で始まった「ドリームトーナメント編」では“リアルタイム漫画”の原則を崩した。2018年の今も同トーナメントを戦っている。「6年の間に、現実の野球との時間差が広がっていった。実在選手は出にくくなっていた」と指摘する。79歳の水島氏が実在選手を描くには、年齢差が壁になっていったのかもしれない。

 “魔球全盛”だった1970年代にリアルな野球を描いたといわれる「ドカベン」。だが実際には、殿馬の打法「白鳥の湖」や、バットスイングの風圧だけでボールを飛ばすなど非現実的な描写も混在する。コージィ氏は「それでも水島さんの絵には、投球や打球のフォームに説得力があった。必ずしも正確でないかもしれないが、それは水島氏一流のデフォルメで、圧倒的な漫画的リアルがあった」と振り返る。

 野球漫画がリアリティーを獲得し、その後も長く“漫画の王道”として君臨する礎を築いた名作として「記録にも記憶にも残る野球漫画」とその功績を称えた。

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2018年6月28日のニュース