ポーランド出身女流棋士カロリーナさん、母国にエール「最後までベストを」

[ 2018年6月28日 09:30 ]

将棋界初の外国人女流棋士、カロリーナ・ステチェンスカ女流1級
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 西野ジャパンが決勝トーナメント進出をかけるサッカーW杯の1次リーグ第3戦は、28日の日本時間午後11時にキックオフ。相手のポーランドはすでに2敗を喫し1次リーグ敗退が決まっているが、FIFAランク8位の実力国。同国出身で将棋界初の外国人女流棋士、カロリーナ・ステチェンスカ女流1級(27)が、両国の熱戦へ期待を語った。

 遠く離れた日本から、戦いを見守ってきたカロリーナ。「敗退は残念だけど、W杯で試合ができるのは名誉なこと」。母国イレブンへの誇りを口にした。

 日本の将棋界に、ポーランド代表が置かれた状況に当てはまる言葉がある。故米長邦雄永世棋聖の「自分には消化試合でも、相手にとって大事な一戦なら全力で臨む」という、いわゆる“米長哲学”だ。もちろん大前提は、どんな対局にも手を抜かないこと。解釈が分かれる極端な表現で、棋士の間でも賛否両論がある。カロリーナは米長さんが死去した翌2013年に来日。その言葉は知らなかったというものの、出場が名誉だからこそ「その通り、最後までベストを尽くしてほしい」と共感した。

 祖父がサッカー好きで、06年ドイツ大会決勝イタリア―フランス戦を一緒に楽しくテレビ観戦したのを思い出すという。母国のエースFWレバンドフスキは「CMに出たり、私生活も話題になる」ほどのスターだと説明。「弱かった代表チームが彼の活躍で強くなり、サッカーが人気になった。棋士でいえば、年齢は違うけど、ブームを作ったという意味で藤井七段のような感じ」と例える。ここまで無得点と実力を発揮できていないが「詰み(ゴール)に持っていく力がある」と、ずば抜けた決定力に期待を寄せた。

 昨年2月、正式な女流棋士になった。格上相手に挑むサッカー日本代表と同様に、自身も段位の差を覆す金星を挙げている。今年1月の公式戦で、女流棋士歴代最多のタイトル獲得43期を誇る清水市代女流六段を撃破。「大先輩だけどしっかり準備して、勝てたのは嬉しかった」と自信をつけた。山梨学院大大学院を今春修了し、3月に甲府市から都内に転居。都内の女流棋士との練習対局が増えたほか、将棋を紹介する英語サイトや雑誌の編集、対局中継の聞き手を務めるなど仕事の幅を広げている。また、16年に就任した「甲府大使」の活動も継続している。

 「キルバサ」「カバノス」(ともにソーセージ)や「カルプ」(鯉料理)など、母国の料理が恋しくなることもある。転居をきっかけに在日ポーランド人の友人も増え、エネルギーをもらっているという。「試合は友達と見ると思う。とても楽しみ」。縁の深い両国の対決を、さらなる活躍へのモチベーションにする。

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2018年6月28日のニュース