名物Pが語る今後のテレ東「もっと他局と違う色を」「癖ある番組を普通に」

[ 2018年1月3日 08:00 ]

テレビ東京 越山プロデューサー×伊藤プロデューサー Wインタビュー(3)

テレビ東京「ローカル路線バスの旅Z」を手掛ける越山進プロデューサー(右)と「池の水ぜんぶ抜く」を手掛ける伊藤隆行プロデューサー。茶目っ気たっぷりの越山プロデューサーは、同局のマスコット「ナナナ」を抱きかかえる
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 “異色企画”を次々と生み出していることで話題のテレビ東京。その中でも特に異彩を放っている番組が「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」(通称・バス旅)と「池の水ぜんぶ抜く」(通称・池の水)だ。「バス旅」を手掛ける越山進プロデューサーと、「池の水」を手掛ける伊藤隆行プロデューサー。同局が誇る2人の“ヒットメーカー”がテレビ番組、そして「テレビ東京」に対しての思いを熱く語った。

――社歴で3年先輩の越山さんと後輩の伊藤さん。プライベートでも番組づくりについて語り合うことがあると聞きました

越山P 「よく2人で飲みながら話しますよ。ほとんど伊藤の悩みを聞かされていますけどね(笑い)。最近は話題もなくなってきたので、悩んでいる後輩をゲストとして呼んだりしています」

伊藤P 「でも、ゲストの悩みより僕の悩みの方が深かったりします(笑い)」 

越山P 「伊藤は飲むとすぐ『テレビ東京はこれでいいのか?』みたいな面倒臭い話をするから嫌なんです(笑い)」

――悩める後輩にはどのようなアドバイスをするのですか?

伊藤P 「越山先輩は『ゴールデンで視聴率3%を出しちゃったんです』と悩んでいた後輩を、『あの企画で失敗して悩んでいるようではダメ』と“瞬殺”していましたね。『お前は振り切っていない。思い切りやって3%だったら納得するけど、あれでは失敗になっていない』と」

越山P 「その番組がどこかで見たことのあるような内容だったんですよ。それで数字を取れないっていうのは健全じゃないなと思って。野球に例えて“3バント失敗”と呼んでいます(笑い)。“当てに行く”くらいだったら空振り三振のほうがいいですよ」

伊藤P 「確かに最近 “バントしにいっている企画”が多いかもしれないですね。それだと、“なにこれ!?面白そう!“という番組はあまり出ないように思います。視聴率のことを考えると、医療モノ、警察モノ、日本人モノ、外国人モノなどのジャンルに寄っていくのは分かりますけど…。それはテレビ東京だけではなく、テレビ業界全体の傾向ですよね。すごくマーケティングに力を入れている気がします。もちろんマーケティングにお金をかけた番組も必要だと思いますけど、その数が少し多いですよね。マーケティング重視の番組ばかりを増殖させるのは良くないと思っています」

越山P  「結果的に同じような番組が出来上がってしまいますよね。もともとは全く違う企画だったのに、出来上がった番組はどこかで見たことのあるテイストになっているということがよくあるんです。そこから“長打”はあまり期待できない気がします」

伊藤P 「とにかく、失敗することも必要ですよね。思いっきりスッ転ぶことですよ。ちゃんと受け身を取れるような転び方ではなく、顔面から血が出るくらいの転び方を(笑い)。越山先輩は笑っちゃうくらいの失敗をしても、『まあ、いいんじゃないですか』とニコニコしていますからね」

越山P 「僕たちもゴールデンで3%台の視聴率を出したことありますから(笑い)。そして、これからも失敗し続けると思います」

――“異色企画”が支持されているテレビ東京。今後はどういったことが必要になるでしょうか

越山P 「他局と違う“色”をもっと残していったほうがいいと思いますね。“ヨソじゃ絶対にこんなことやらない”という感じが少し薄くなっている気がします。昔のウチの番組を見て思うんですけど、もう放送事故です(笑い)。でも、野武士のような感じがあるんですよね。それに比べると今は角がとれた普通の番組が多いので、もっとゴツゴツしていたほうがいいと思いますね」

伊藤P  「僕は、癖のある番組づくりをいかに“普通”にやっていくかが重要だと思っています。これまではお金や人が少ないという理由で、仕方なく王道から外れた番組をつくっていました。でも、今はそのことを皆が分かっていますよね。それに、お金も確かに少ないですけど、昔ほど少ないわけではない。仕方なくやっていた“くだらなさ”というものは、今は一つの戦法になっているんです。だから『テレ東だからこうやったぜ』と、奇をてらったようなやり方にならないように気をつけたいですね」

 独自路線の番組を連発し、話題となった2017年のテレビ東京。名物プロデューサー2人は、同局の“現在地”を冷静に見つめていた。果たして今後、どのような新企画が誕生するのか。そして、2人が手掛ける「バス旅」「池の水」はこれからどのような展開を迎えるのか。2018年も“テレ東”から目が離せない――。

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2018年1月3日のニュース