根強い不仲説も…白鸚襲名で期待高まる吉右衛門との兄弟共演

[ 2017年11月29日 11:00 ]

襲名披露パーティーを開いた(左から)松本幸四郎、市川染五郎、松本金太郎
Photo By スポニチ

 歌舞伎俳優の松本幸四郎(75)、市川染五郎(44)、松本金太郎(12)が来年1月2日の東京・歌舞伎座での襲名披露公演で、それぞれ松本白鸚、新幸四郎、新染五郎となる。親子3代の同時襲名は37年ぶりで、11月26日に行われた襲名披露祝賀会には各界の著名人ら約1300人が3人を祝って、大盛況となった。

 ただ、少しやきもきしたことも。続々と歌舞伎役者が会場に到着しているのに、幸四郎の実弟で人間国宝の中村吉右衛門(73)がいっこうに姿を見せない。歌舞伎界の周辺では2人の不仲説が根強く残っているため、ちょっとした緊張感も走ったが、“真打ち”は会が始まる直前にようやく登場した。関係者によると、到着がギリギリになったのは、12月に国立劇場での歌舞伎公演を控えているため、その稽古と準備が押していたからということだった。

 歌舞伎ファンには有名な話だが、この兄弟、今の時代では考えられないような生い立ちを送った。父は8代目松本幸四郎。祖父は初代中村吉右衛門。しかし、初代には男子が生まれず、2人の母・正子が1人娘だった。正子は「男の子が2人生まれたら、次男はお父さんの養子に致します」と初代に約束。その通り2人が生まれ、次男が祖父の養子となった。戸籍上は母親が姉で、兄は甥っ子。吉右衛門は少年時代、その奇妙な血縁関係に随分悩んだという。

 芸道も違った。松本幸四郎という名跡が代表する高麗屋は代々革新を好んだ。一方、中村吉右衛門の播磨屋は重厚な古典的芸を得意とした。それぞれの名跡を継いだ兄弟の歩みも自然と違う道となったが、若い頃に歌舞伎界のプリンスとして現代劇に挑戦する幸四郎のさっそうとした姿に、若い吉右衛門は羨望と嫉妬を隠せなかった。

 吉右衛門の兄への複雑な感情、さらに年を経るごとにめったに共演しなくなった2人の関係性はさまざまな憶測を呼び、不仲は半ば既成事実のようになった。

 ただ、共演が少ないのはそれぞれ高麗屋と播磨屋を背負って立つ立場であり、なかなか機会を作れなかったというのが実情。甥っ子である染五郎は叔父を慕い、稽古をつけてもらうこともしょっちゅうだし、舞台でも年に何度も共演している。少なくとも、家同士の確執ということは一切ない。

 その染五郎が来年から10代目松本幸四郎を名乗り、高麗屋を引っ張る立場になる。それは、9代目がこれまで以上に自由な立場になるということ。すなわち、機会が少なかった兄弟共演の数が増える可能性もあるのではないか。古典も現代劇も超一流の舞台役者と、人間国宝の共演。歌舞伎ファンならずとも期待に胸が高まる。

続きを表示

2017年11月29日のニュース