個性派教師と青春だけではない…新感覚「学園ドラマ」に視聴者も「考えさせられる」

[ 2017年11月12日 18:04 ]

ドラマ「明日の約束」に出演の(左から)仲間由紀恵、井上真央
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 “学園ドラマ”といえば「3年B組金八先生」や「GTO」「ごくせん」などの個性的な教師が主人公であったり、「WATER BOYS」や「野ブタ。をプロデュース」など生徒たちの青春物語を描いた作品が定番だった。この秋のドラマは学校を舞台にしながらも“ミステリー”や“学校改革”というこれまでになかった新しいタイプの学園ドラマがラインナップされている。

 スクールカウンセラーの主人公がある男子高校生の死の謎を追うという、学園ドラマにミステリーの要素を取り入れた意欲作が井上真央主演「明日の約束」(フジテレビ、毎週火曜午後9時)。生徒の死の真相に迫るうち、クラス内のいじめや部活動でのトラブルなど学校内だけの問題ではなく、家庭内でも彼を溺愛し過干渉を続けてきた“毒親”(仲間由紀恵)の存在が明るみになるなど、死に至った理由が複数浮かび上がってくる。

 犯人は誰?というわかりやすい構図で展開するのではなく、軽い気持ちだった無視がいじめになってしまったと罪悪感にさいなまれる生徒たち、過去に体罰問題を起こしたことで疑惑をかけられてしまう部活顧問、さらに亡くなった生徒と同じく過干渉の“毒親”に悩まされる主人公など、その死が登場人物それぞれに与えた影響を多角的に描いているのが深い。

 視聴率は初回8・2%から直近では5%まで落ち込むなどかなり苦戦しているが、テレビ視聴アンケート「テレビウォッチャー」(対象2400人)によると、初回満足度3・67(5段階評価、3・7が高満足度の基準)から、3.73→3.76と上昇中。視聴者の感想を見ると「謎が深いので毎回楽しみ」(32歳女性)、「全体的に重い内容だが、続きが気になる」(30歳男性)。テーマは重いが、謎がジワジワと解き明かされていく過程にのめりこむ視聴者も多い。

 35歳の商社マンが校長先生となり経営難の私立高校を立て直していくという“学校改革”の視点を取り入れたのが櫻井翔主演の「先に生まれただけの僕」(日本テレビ、毎週土曜午後10時)。主人公の校長が生徒に“奨学金は借金である”と現実を突きつけたり、生徒と向き合えずお金のために働いている先生を辞めさせたり(学習塾の転職を勧める)と、温かさが1つの柱でもある学園ドラマに厳しい目線が加わっている点が新しい。

 生徒主導で授業を進める話題の“アクティブラーニング”を、ドラマの中で失敗例と成功例を対比してみせるなど教え方の進化も勉強になる。満足度は初回3・14と低い位置からスタートしたが、3・33→3・54とジワジワ上昇。視聴者の感想からも「授業で習っている内容が社会で役に立つか?というテーマをつくづく考えさせられた」(35歳女性)、「保守的な現場と革新派の校長の対立を見事に描いており、社会人からするとあるあるの感じが共感する」(29歳男性)など、ドラマを楽しむのはもちろん、深く考えさせられたり、多くの人が一時期籍を置いた学校と、自分のいる環境とを照らし合わせて共感したりなど、学園ドラマのくくりとは違った作風に、学校という場を見つめ直すドラマとなっている。

 双方とも1話完結でスカッとできる勧善懲悪なドラマではなく、簡単には答えが出ない問題をテーマにしている部分もあるが、毎回の積み重ねが最後にどういう着地点に行きつくか。毛色が違う学校ものの行方に注目したい。

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2017年11月12日のニュース