テレ東“異色局員”真船さん 漫画家デビューを感謝「この会社じゃなければ…」

[ 2017年11月12日 10:00 ]

「オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます」の書影
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 テレビ東京の現役局員、真船佳奈さんが執筆したコミックエッセイ「オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます」(朝日新聞出版)が注目を集めている。現役のテレビ局員が漫画家デビューというニュースは、SNS上などで話題沸騰。先月20日に漫画が発売されると当初の想定を超える売れ行きを見せ、新人漫画家としては異例の発売即重版も決定した。“異色局員”として話題の真船さんに心境を聞いた。

 入社6年目の真船さんが、AD時代のエピソードを漫画化した今作。「明日の朝までにどんぐりを600個集める」「カメラに無数に映りこんだ男性の局部にひたすらモザイクをかけ続ける」など、他業種ではあり得ないような業務内容に悪戦苦闘する主人公「まふねこ」の姿が描かれている。

 社内での評判について「会社の役員や上司まで読んでくださったみたいで、廊下を歩いていたら『お、まふねこ先生!』と声をかけられました」と照れながら話す真船さん。「私のツイッターにも、『来年の春からADになります』『娘がADを目指しています』などの感想をいただきました。人の人生に私の本が関わってくるんだなと思うと、1冊の本を出すことの影響は想像以上に大きいんだなと思いました」と反響の大きさに驚きを隠せない様子だが、「ダイレクトに意見が届くことがすごく楽しくて、ずっとエゴサーチしています」とうれしそうに語る。

 毎月約3万円を電子コミックに費やすほどの漫画好き。手塚治虫作品の大ファンで、ファンクラブに入っていたこともあるという。しかし本格的に漫画を執筆した経験はなく、今回の漫画家デビューが決まったきっかけは、仕事の合間に描いていた絵が「ゴッドタン」(土曜深夜1・45)などのプロデューサー・佐久間宣行氏の目に留まったことだった。

 「日記を付けるのと同じ感覚で、暇な時間に紙に絵を描いていました。もともと絵を描くことが好きで、親せきに見せるためにウェブ上で甥っ子の漫画を描いていたのですが、そのことを知った佐久間さんが『ADが描くADの漫画って面白そうだから描いてみたら?』と言ってくれたんです。その後、紙に絵を描いていたことを思い出して佐久間さんに写真を送ったら、それがツイッターで拡散されたことがきっかけで出版につながりました。すごく運が良かったです。佐久間さんには感謝しています」。

 大学時代には素人参加型の人気バラエティー番組にも出演していたという“異色の経歴”の持ち主。「就職活動がすごく嫌になった時期があって、その時にオーディションに応募したら通っちゃったんです」と笑う。

 だが、その経験が「テレビ」への憧れを強くさせた。「すごい司会者とゲストがいて、2時間ぐらい収録を行うのに、それが30分の番組になるってものすごく贅沢なことですよね。将来は何か面白いことがしたいなと考えていたんですけど、面白いことを発信するのに一番向いているメディアはテレビだなと思ったんです」。

さらに大きな転機となったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災。福島県出身の真船さんは、東京で暮らす家族とともに心を痛めていたという。

 「テレビで絶望的な状況が映っていて家族も暗くなっていました。でも、テレビ東京がバラエティー番組を放送し始めて、それを見た祖母が『日本も捨てたものじゃないね』と明るくなったんです。もちろんテレビには報道の使命もありますが、人々が悲しんでいるときにこそ面白いことをやるテレビ東京に行きたいなと思うようになりました」と同局を志したきっかけを明かす。

 入社3年目から同局制作局でADを務め、今年10月にBSジャパン編成部に異動。AD時代を「仕事ができないポンコツで、めちゃくちゃ怒られました」と苦笑いで振り返る。「でも仕事ができるADだったら、今回のような漫画は描けなかったと思います。主人公はポンコツなので。本当にポンコツで良かったなと思います」と笑い、「すごく怒られたけど、風通しのいい会社だからADを続けられたと思います。それに、この会社じゃなければこういった本を出せなかったと思いますね」と同局の社風に感謝する。

 デビュー作が発売即重版決定と、新人漫画家としてこれ以上ない最高のスタートを切った。漫画家としての夢を聞くと、「手塚治虫賞が獲りたいです!」と即答。「手塚治虫賞は冗談だとしても、何か賞が獲りたいですね。自分の番組で世間に影響を与えるのがテレビマン最大の目標だと思いますが、私は漫画で世間に影響を与えて、それが“賞”という目に見える形になればうれしいです」と“野望”を語った。

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