佐藤浩市 一時は確執噂も…尊敬の念「芝居をなめないのは三國のおかげ」

[ 2015年9月1日 11:15 ]

役者への熱意を語る佐藤浩市

 俳優にはサラリーマンや役人のような定年がない。スポーツ選手とも違い、体力の衰えを理由に現役を退く人もまれだ。俳優・佐藤浩市(54)が、定年で天下った官僚らのその後の生きざまを描くテレビ朝日のドラマ「ハッピー・リタイアメント」(今秋放送)に主演する。自ら50代半ばを迎えた今、その胸に「引退」の文字がちらつくことはあるのか!?

 三國さんは80歳を過ぎても現役を続け、90歳で亡くなる直前まで映画に出演した。一時は父子の確執を報じられたこともあったが、今、その言葉には深い尊敬の念が感じられる。

 「彼がいてくれたおかげで、演者として“これでいいか”と思わなくなった。“ま、こんなもんでしょう”と思っている役者さんがいるとは言わないけれど、自分では絶対にそう思わないようにして常に“もうちょっと違うやり方があったかな”と考えている。彼の生き方がそうで、それをずっと見てきた。芝居をなめないのは三國のおかげ。一番の財産ですね」

 今や若い世代の間では三國さんより有名とも言える。役者としての優劣を決めるのは極めて難しいことだが、つい比較してしまいたくはなる。

 「仮に“三國さんの作品を全部見たし、佐藤さんのも全部見た”と言う人がいたら“そうですか”とお話を聞くしかない。おやじの作品の中にも決して誇れないものがあるかもしれない。たまたまそれを見た人が、僕が一番乗っている作品を見たら“佐藤さんの方がいい”と言うかもしれないし、その逆もある。スポーツ選手の親子なら、時代の違いはあるにしても、数字という比べられるものがある。我々の場合はそうではないんですよね。人の記憶の中だけの話なんで、年配の方が“三國さんは凄かった”と思うのは当たり前だし、僕自身も“おやじを超えた”とか考えたことはないです」

 確かに、スポーツ選手と違って俳優が何か数字的な目標を設定するのは難しそうだ。

 「でも、出演映画100本というのはクリアすることが可能な数字なんですよね。僕はたぶん今、95本なので、あと数年でクリアできちゃうはずなんです。昔とは作られる映画の本数が違うので、先達の人たちから見れば何でもないことだろうけど、今の若い役者がそれをクリアするのは難しい。長きにわたってやっていないとできないことですから。ある種数字として見えるものとしての面白さがあるし、楽しみですね」

 今のペースで行けば、60歳を前に目標を達成してしまうだろう。三國さんのことを考えれば、その先にまだ30年もの時間がある。

 「見たことのない自分を見られるという期待感があります。あと数年もしたら、おじいちゃん役の年ですよ。おじいちゃん役を自分が楽しむのか、あらがうのか。今度は考えがそっちにシフトしていくんじゃないですかね。逆に、その年でアクションをやってもいい。“あれ、まだ体が動くんだ!?”と驚かれる面白さがありますよね。人を驚かせたいという思いはあります」

 佐藤が役者を引退する可能性は…。ゼロだ。

 ◆佐藤 浩市(さとう・こういち)本名同じ。1960年(昭35)12月10日、東京都生まれの54歳。80年、NHKのドラマ「続・続 事件 月の景色」でデビュー。81年の映画「青春の門」でブルーリボン賞新人賞。94年の映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、2000年の映画「ホワイトアウト」で同賞最優秀助演男優賞。今年11月公開予定の映画「起終点駅 ターミナル」、来年公開予定の映画「64(ロクヨン)」にそれぞれ主演。

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