松坂大輔氏&西武・稼頭央監督 新春“松松コンビ対談” 投手王国復活でV奪回だ

[ 2023年1月3日 05:30 ]

来季の目標「凡事徹底」を色紙に書き込み笑顔を見せる松井監督(右)と、獅子舞で応援する松坂氏(撮影・尾崎 有希)
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 初夢は投手王国復活――。就任1年目を迎えた西武・松井稼頭央新監督(47)と本紙評論家の松坂大輔氏(42)の元同僚による新春対談が実現した。近年は攻撃力がチームカラーとなっているが、新指揮官の理想は松坂氏がエースで在籍した時代のような投手力中心のチーム。「ミスターレオ」と「平成の怪物」は互いの印象やメジャーで対戦した過去も懐かしんだ。(取材構成・神田 佑、鈴木 勝巳)

 松坂 明けまして、おめでとうございます。

 松井監督(以下、松井) 明けましておめでとう。まさか大輔とこういう感じで話すとは思ってなかったな。

 松坂 そうですね。でも、いずれ監督になると思っていたので。監督として新年を迎えて、心境の変化はありますか?

 松井 今年の春は非常に楽しみ。選手がどうオフを過ごして、キャンプに入るのか。自分への不安はもちろんある。どうなるんやろ、って。

 松坂 昨年は投手陣が上がってきて、逆に打線の調子が上がらなかった(※1)。自分が入団した時のライオンズは投手力を含めた守備力で勝つイメージでした。

 松井 本当にそう。打線は水物。毎年、打てるわけじゃない。(ここ数年は)“投手王国をもう一度”とやってきた中で、昨年は防御率も良かったし、投手で勝てた試合が多くあった。自分も入った時は投手にずっと助けられてきた。

 松坂 04年から稼頭央さん、07年から自分も抜け、打撃で勝つチームに変わっていった印象ですね。

 松井 以前は投手を軸に守って勝ってきた。そういうチームにしたい。それが本当の西武らしい野球。

 松井 大輔の存在は本当に大きかった。大輔が登板する時は、どこの球場でも満員。(当時オリックスの)イチローさんとの対決は客席のフラッシュが凄かった。あれだけパシャパシャ光る瞬間は見たことがない。それを遊撃の“特等席”から見ていた。

 松坂 自分はドラフト直後のテレビ出演で稼頭央さんに初めてお会いして、うれしくて写真を撮ってもらいましたよね。

 松井 こっちはこっちで“うわー松坂や”と思ったよ。東京ドームの日本ハムとのデビュー戦はたまげた。片岡さんからの三振は見たことがない球の質だった(※2)。

 松坂 自分は稼頭央さんが連続試合出場がかかった試合で腰を痛めているのに打席に立っていたことを凄く覚えています。車椅子で球場に移動している姿が印象的で。

 松井 メジャーで対戦する前は楽しみやった。まさか元同僚がワールドシリーズで対戦するとはね。

 松坂 凄い確率でしょうね。

 松井 絶対に真っすぐで来るだろう、とね(笑い)。

 松坂 しっかり狙われましたね(※3)。

 松井 でもレッドソックスは強かった。メンバーも凄かった。懐かしいなぁ。

 松坂 それまで対戦機会がなかったので、自分もめちゃくちゃ楽しみでした。

 松井 ところで大輔は西武時代にエースとしてどういう信念を持っていたの?

 松坂 先発として最後までマウンドを譲らない、ですかね。

 松井 確かに当時は、いつも周囲に“最後まで投げる”と思わせていた。

 松坂 今の投手陣でエースは高橋投手だと思いますけど、本当の意味でエースと呼ばれるには物足りないと思います。完投もなかった。もっとやれると思います。自分は当時、(セットアッパーだった)デニー(友利)さんに冗談で“今日は準備しなくていいな”と言われた。西口さんも投げるスタミナが凄かった。

 松井 昨年は中継ぎがよく投げた(※4)けど、先発が1回でも2回でも多く投げてくれるのが理想。(高橋)光成はもちろん、松本、今井ら投げられる投手はいる。

 松坂 他の投手を見ていても“このイニングが最後かなあ”と見えてしまう。もっと“マウンドを譲らない”というものを見せてほしい。ライオンズの強さは投手力を含めた守備力の高さと足を使った攻撃。また、それを見たいです。

 松井 本当にそう思う。走塁も含め全員でプレッシャーをかけられる、隙のない野球を目指していく。何対何でもいいので、1点を勝ち越して勝ち切らないとあかん。

 松坂 稼頭央さんがどんな野球をするのか、本当に楽しみにしています。

 松井 うわー、勉強せなあかんな(笑い)。

 ※1 投手陣は21年まで4年連続でチーム防御率がリーグワーストだったが、昨季は一気にリーグトップの2.75まで改善。一方でチーム打率.229と60盗塁はともにリーグワーストだった。

 ※2 デビュー戦だった99年4月7日の日本ハム戦の初回に当時の相手の主砲だった片岡篤史を内角高め155キロの剛速球で空振り三振に斬り、東京ドームに詰めかけたファンをどよめかせた。シーズンを通して注目を集め続けた同年は16勝を挙げて最多勝に輝き、新人王も獲得。

 ※3 07年10月27日のワールドシリーズ第3戦(コロラド)でレッドソックスは松坂が先発し、ロッキーズの松井稼は「1番・二塁」で出場。初回は松井が初球を右前打も、3回は松坂が空振り三振を奪い、5回は遊ゴロ。大リーグでの対戦はこの1度だけだった。

 ※4 救援防御率は21年3.59から昨季は2.31に向上。守護神の増田がリーグ2位の31セーブを挙げ、セットアッパーの平良と水上がともに35ホールドポイント(ホールド+救援勝利)で同時に最優秀中継ぎ投手に。一方で先発の完投数は与座と松本の2つしかなかった。

 【取材後記】松井監督が色紙に記した言葉は「凡事徹底」。「当たり前のことを徹底する」という意味だ。松坂氏と理想が一致した「隙のない野球」は、その凡事徹底がつくると考える。新体制は10月の秋季練習で始動。ダラダラと集合する習慣をなくし、ランニングは全員が足をそろえた。あるベテランは「負けが込んでも立て直せる気がする」と言う。

 現役時代と同様、仲の良さが伝わる今回の新春対談。印象的だったのは松坂氏の新人時代に春季キャンプ地で松井監督が初めて飲食店に誘った24年前の思い出話。序盤の料理が松井監督の口に合わず、すぐに「違うお店に行こう」と松坂氏も驚くこだわりを見せたそうだ。一回の食事にも妥協を許さない姿勢は野球にも通じている。(神田 佑)

 ◇松井 稼頭央(まつい・かずお)1975年(昭50)10月23日生まれ、大阪府出身の47歳。PL学園では2年春の甲子園に出場。93年ドラフト3位で西武入団。98年にMVP。盗塁王を3度、最多安打を2度受賞した。04年からメッツ、ロッキーズ、アストロズでプレー。11~17年に楽天、18年に西武に復帰し同年限りで現役引退。日米通算成績は打率.285、2705安打、233本塁打、1048打点、465盗塁。19年から西武2軍監督を務め、昨季は1軍ヘッドコーチ。右投げ両打ち。

 ◇松坂 大輔(まつざか・だいすけ)1980年(昭55)9月13日生まれ、東京都出身の42歳。横浜高では98年春夏の甲子園連覇。同年ドラフト1位で西武に入団した。99年に新人王。最多勝3度、最優秀防御率2度、最多奪三振4度などタイトルを獲得し、07年にレッドソックスに移籍。同年に世界一に輝いた。15年にソフトバンクで日本球界に復帰して中日、西武でプレーし21年限りで現役を引退。日米通算成績は377試合で170勝108敗2セーブ、防御率3.53。

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