合格率5%前後 誰もが主役だった12球団合同トライアウト

[ 2022年11月11日 08:20 ]

観戦に駆け付けたファンや家族ににあいさつするトライアウト参加選手
Photo By スポニチ

 「今、出せる力は出し切った」「悔いはないです」――。11月8日、仙台・楽天生命パークで行われた12球団合同トライアウトを取材した。多くの選手が同じような言葉を口にした。きっと、後悔なら現役時代に数え切れないほどしてきたのだろう。自らの人生に刻む刻印として、最後の持てる力を全て出し切る。緊張から解き放たれ、誰もがどこか晴れやかな顔をしていた。

 今年は計49人が参加した。合格率は5%前後といわれる狭き門。仮に合格、NPB球団と再契約を結んでも、そこから第一線で何年活躍できるか。本人の努力や覚悟はもちろんだが、それだけでは通用しないのもプロ野球の世界だ。彼らはそんな厳しい世界に再び身を投じようと、トライアウトに挑戦する。

 記憶に残っているのは15年の12球団合同トライアウト。静岡・草薙で開催され、西武を戦力外になった田中靖洋投手を取材した。同投手は15年にプロ初勝利を挙げたばかりで、当時28歳。トライアウトでは参加選手最速の147キロをマークし、その後秋季キャンプでのテストを経てロッテに入団した。今季限りで現役を引退したが、ロッテでは貴重な中継ぎの一員として7年間プレー。プロ野球人生17年は立派のひと言だ。一方で彼のように、トライアウトを挟んで長くプレーする選手はまれなケースともいえる。

 今回のトライアウトは3年ぶりに有観客で開催された。入場料は500円。3141人の観客が集まったが、選手の家族、関係者も多かった。現役を引退した元ヤクルトの坂口智隆氏、巨人に移籍した長野久義も仲間を応援しようとやってきた。終了後。正面出口にはトライアウトを終えた選手を待つ家族らの姿があった。照れくさそうに出てくる選手。時折、拍手も起こる。最後の晴れ姿――。たとえ合格はできなくても、そう心に刻んでプレーした選手もいただろう。悔いはない。この日は誰もが主役だった。(記者コラム・鈴木 勝巳)

続きを表示

2022年11月11日のニュース