大谷翔平が2年連続で本塁打競争参戦なら最大のライバル アロンソの素顔とプライド

[ 2022年7月2日 13:27 ]

昨年の球宴ホームランダービーを制したメッツのアロンソ(AP)
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 6月28日、シティ・フィールドでメッツのピート・アロンソ内野手(27)に、久々にゆっくりと話を聞いた。クラブハウスで腰を落ち着けてのインタビューは、新人最多記録を更新する53本塁打を放った19年のルーキーシーズン以来。過去2年はコロナ禍もあって、なかなか取材機会がなかったが、その丁寧で落ち着いた語り口はメジャー1年目と変わっていなかった。

 アロンソは過去2年連続でオールスターのホームランダービー(本塁打競争)を制し、「史上最高のホームランダービー・ヒッター」とまで称されるようになっている。強さの秘訣(ひけつ)を聞いた時も、答えは明快だった。

 「大切なのは通常通りの打撃練習のつもりで臨むこと。それから楽しむこと。自分らしく、楽しみ、精神的に強く臨めば結果はついてくると信じている。過去2年はそのやり方でうまくいき、最高の時間が過ごせた。僕の場合、ホームランダービーは子供のころからずっと目標にしていたイベントだったから、今季も出場できればいいなと願っているよ」

 昨季は37本塁打を放ち、今季も現在、打点(69)ではリーグ1位、本塁打(22)では同2位。メッツの野手では最大級のスター選手になったが、それでも謙虚さと周囲への配慮を忘れないナイスガイ。昨季の本塁打競争は第1ラウンドで敗退したエンゼルス・大谷について聞いた際、「(大谷と)実際に同じフィールドで競い合い、間近でプレーする姿を見れたのは貴重な時間だった。ダービーでの姿を見て、凄く負けず嫌いなんだなという印象を受けた。飛び抜けた才能だよ。目の前で見ても本当に優れた選手だったから、あれだけ話題になっているのが理解できた」とうれしそうに語る姿も印象的だった。

 それほど謙虚なアロンソがほぼ唯一、プライドをのぞかせたのは、“天性のホームラン打者”に話が及んだ時のこと。「あなたがそうであるのと同様、大谷も天性のホームラン打者だと思うか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。

 「全てのホームラン打者には、まず第一に好打者だという基盤がある。その上で強さとパワーに恵まれた者が、ホームラン打者になるんだ。そういった意味で、僕と大谷はとても似ているとも思う。ただ体格が良くて、パワーがあれば誰でもホームラン打者になれるというわけではない。好打者だからこそ、そうなれるんだ」

 その希有なパワーばかりが話題になるアロンソだが、今季は打率もここまで・284とキャリアハイの数字を残している。その言葉通り、まずはバットでボールをしっかり捉える能力がなければ、これほどの本塁打数を残せるはずがない。その言葉からは、4年目にしてメジャー屈指の強打者として確立された主砲のプライドが感じられた。

 取材の最後、「ありがとう」と自ら右手を差し出してきたアロンソの今後が楽しみだ。27歳と年齢的にも脂が乗り、謙虚さと自信の両方をバランスよく備えた通称「ポーラー・ベアー(ホッキョクグマ)」の視界は良好。本塁打競争を3年連続で制し、後半戦もこのままハイペースで打ちまくっても、もう誰も驚くべきではない。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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2022年7月2日のニュース