【21年版・球界“新”士録9】広島ドラ5・行木 ケガと“無給生活”乗り越えた150キロ元独立リーガー

[ 2021年1月24日 08:30 ]

広島ドラフト5位・行木
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 過去2年、自宅は少しばかり暗かった。広島のドラフト5位・行木は「なるべく電気をつけない。家にあまりいないんですよ」と振り返る。横芝敬愛から独立リーグの徳島に進むも給料が出なかった。1年目を右肩痛で棒に振り、完治した昨年もシーズン終盤まで無給の練習生契約。一時は4つのバイトを掛け持ちし、両親からの仕送りにも頼った。毎月の電気代は600円程度の節約生活だった。

 「洗濯、自炊、バイトをして練習。大変なことはいっぱいあったけど、上(NPB)を目指すためと思えば苦ではなかった」

 昨年9月、2カ月ぶりに登板すると自己最速を10キロ以上更新する150キロを計測。シーズン終盤の数試合は選手登録されて給料が支払われた。覚醒の要因は技術面だけではない。「自分が思うのは、まず体重が増えたこと」。バイト先の居酒屋では、まかないを満腹になるまで食べさせてくれた。入団直後に体重70キロだった細身の体格から約7キロの増量。たくましさも増した。

 「人としても成長できた。ケガで裏方の仕事をやる機会が多かった。試合に出られるようになると、裏方さんの気持ちが凄く分かるようになった」

 厳しい生活を承知の上で独立リーグを選んだのは「2年で結果を残せば、旬の時期にNPBに行けるから」。春季キャンプは2軍スタートながら土台づくりに徹するつもりはない。「伸びしろの部分を期待してもらっているとは思うけど、(1年目から1軍で)一試合でも多く経験を積みたい」。苦労が報われる日は、そう遠くない。(河合 洋介)

 ◆行木 俊(なみき・しゅん)2001年(平13)1月8日生まれ、千葉県出身の20歳。本格的な投手経験は横芝敬愛2年時からで甲子園出場なし。19年に四国・徳島に入団し2年目の昨季に10試合で3勝2敗、防御率1.28。1メートル84、76キロ。右投げ右打ち。背番号68。

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