阪神 秋山拓巳氏が磨く「BA」という仕事…児童養護施設での葛藤「親という言葉を使っていいのか」

[ 2026年4月27日 12:00 ]

徳島県の「徳島県立 ひのみね支援学校」を訪問した秋山拓巳ベースボールアンバサダー。試行錯誤しながら野球振興に取り組む(撮影・遠藤 礼)
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 阪神の秋山拓巳ベースボールアンバサダー(BA、35)は少し不安げだった。「結構、難しいと思うんですよね。いつもの野球教室とはちょっと違う部分があるので」。数日後に「BA」としての大事な仕事を控えていた。

 ファームは先週、徳島と高知で独立リーグとの交流試合(24日の高知戦は雨天中止)、高知でオリックスと2試合を行うなど四国に滞在。その期間を利用して昨年球団が立ち上げた野球振興室の活動「トライアルベースボール」を実施した。従来通り、選手の子どもたちへの野球教室などとともに今回、新たな試みとして社会貢献、福祉活動が加わり、秋山BAが複数の施設を訪問した。

 21日、午前中に足を運んだのは徳島県小松島市内の「徳島県立 ひのみね支援学校」。徳島インディゴソックスの2選手とともに小学部14人、高等部15人と交流した。肢体不自由のある生徒たちへのアプローチ。双方向のコミュニケーションが難しい中でキャッチボールでボールがグラブに収まる音、バットスイングでの「ビュン」という風を切る音を届け、生徒たちが飛ばしたボールを捕球してリアクションをするなど1メートル88の大きな体を目いっぱい使って“会話”を試みた。

 「感情を表現できなかったり、思うように動けない。(生徒が)どう感じてるかは分からないですけど、いつもと違う刺激を与えることで先生方も“普段見られない子どもたちを見られた”と言っていたので」。試行錯誤しながら、野球を通じた刺激や反応を生徒たちから感じることができた。

 午後には同県徳島市内の「児童養護施設 阿波国慈恵院」を訪問。様々な理由で親と暮らせない子どもたちと交流する中で、ドキッとしたのは、秋山BAが自身の父親とのエピソードを披露したことだった。父・正二さんに幼少期から厳しく指導され「プロ野球選手にならなきゃいけないと思って野球をやってきた」などと口にし、冒頭では年俸が1億円に到達したことも赤裸々に明かした。
 
 施設の子どもたちに「親」や「金」はNGワードにならないかと勝手に心配していたが、子どもたちの反応は全く違った。1億円には「えー」「すごい」と驚き、父との話には真剣な眼差しで聞きいった。その後の取材で秋山BAにも「接し方が難しくなかったか」と聞くと少し間を置いて答えた。

 「言っちゃったんですけど、親がいなかったりという中で親(という言葉)を使っていいのかなとかも。でもそういうところも子どもたちも受け入れていかないといけないところもあるから、きつくならないように伝わって欲しいなと思った」。目標を持つことの重要性、それを達成した時に見られる素晴らしい景色…タブーを恐れず、そんな「夢」の話を最優先に秋山BAは言葉を投げかけているように感じた。

 24年に現役を引退し、25年から本格的にBAとしてセカンドキャリアをスタート。ここまでの活動を見ていれば肩書きだけの飾りの「BA」でないことを強く感じる。球団は中学校の部活から移行するクラブチームの支援にも注力する予定で今後も「トライアルベースボール」の旗振り役として秋山BAはフル回転するだろう。

 「自分自身、いろんな環境で育ってる子どもたちも見てるし、あらためて伝える難しさは感じてる。こういう社会の現状っていうのも勉強させてもらってる。こういう施設に行ったり、中学校のクラブチームとかもやっていくと思う。いろんなレベル、環境で携わらせてもらってる。色々、自分も勉強していきたい」。徳島での施設訪問の翌日、関係者から「すごく対応が良かった」という言葉をもらったという。野球振興の新たな形を探りながら「BA」という役職を磨いていく。(遠藤 礼)

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